ロサンゼルスの小東京にある日米文化会館(JACCC)理事会は22日、今年1月に同館の館長に就任したグレゴリー・ウィリス氏が同日付けで辞任したと発表した。
ウィリス氏の突然の辞任の裏には、同氏のフランスでの企業犯罪歴がある。
ウィリス氏がJACCCの館長に就任後、多くの従業員がレイオフされたことなどを受け、NCRR(Nikkei for Civil Rights and Redress)が懸念を表明。JACCCの職場環境を確認する中で、ウィリス氏がフランスの裁判所から本人不在のまま資金流用罪などで有罪判決を受けていたことが明らかになった。
NCRRは、JACCC理事会に疑惑解明を求める書簡を送付。館長の人選に雇用斡旋業者サービス「ジョンストンカンパニー」を利用した同理事会は、NCRRの書簡を受け取るまでウィリス氏の過去は知らなかったといい、同氏を含めた緊急理事会で辞任という結論に至った。
ウィリス氏は1981年から2003年までトーレンスに本社を置く米国トヨタ社に勤務。03年、ミシガン州のSPEインベストメント社でシニア・マネジングディレクターを務め、同じころ、自動車部品チェーン店のコンサルタントサービスを提供するカタリナ・キャピタル・アドバイザーズLLCを設立。ウィリス氏はCEO、チーフ投資顧問にキャサリン・ジックフェルド氏が就任した。
SPE社は06年から2011年の間に海外12の製造工場を買収、年間の売上高は1億5000万ドル以上を計上した。その一社、フランスにあるLe Atelier Thome Genot(ATG)社は04年10月にSPE社に買収され、ATGカタリナに改称、ウィリス氏が同社のCEOを兼任した。
フランスのメディアによると、ATGカタリナと3社間で金融取引が繰り返されており、3社のうち2社でウィリス氏が社長を務め、残りの一社はSPEの名前で事業経営されていたという。
買収から2年足らずでATGカタリナ社は閉鎖され資産は清算、300人が職を失った。これを受け元従業員と労働組合はフランスの商事裁判所に提訴した。
仏紙「Le Monde」によると、ウィリスとジックフェルド両氏は盗品所持、企業資金乱用、資金流用による倒産の罪に問われ、審問に出廷しなかった2人には国際逮捕状が出されている。裁判所は09年9月8日、本人不在のまま禁錮5年、2000万ユーロ(約2500万ドル)の罰金を言い渡した。
ウィリス、ジックフェルド両氏はこの他、カナダ・オンタリオ州にある自動車部品工場2社も買収後に閉鎖し、約80人の従業員が職を失った。カナダ紙「The Windsor Star」は、退職金や有給休暇など未払い額は240万ドルに達すると報じている。
地元紙の報道では、両氏ら関係者はカナダでも2件の裁判で訴追されているという。
両氏のフランスへの身柄引き渡しの有無について、米国およびフランス政府からともに返答はなかったが、仏紙「L’Union」は検察官のコメントを掲載。それによると、フランス側は2010年2月、米国側にウィリス、ジックフェルド両氏の身柄引き渡しの要求をしたが、現在まで米国側からの返答はないという。
JACCCは、ウィリス氏を採用した際に利用した雇用斡旋業者サービス「ジョンストンカンパニー」について、サービス利用支払額を公表していないが、専門家の話では通常は7万5000ドルから10万ドルの間という。
非営利団体への雇用斡旋を専門に扱うジョンストンカンパニー社のホームページには、「徹底した面接および、適任性を判断するため身元調査も行う」と明記されている。羅府新報社は「ジョンストンカンパニー」社へ取材依頼をしたが、現在のところ返事はない。