江戸の花火は隅田川、この花火大会は1732年(享保17年)に発生した大飢饉とコレラの犠牲者を弔うため、翌年の7月9日(旧暦)両国の川開きに始まったそうだ。当時は20発前後、以後中断はあったものの人々の花火への思い入れは強い。
 今年の隅田川花火大会は7月28日、スカイツリーが完成して一段と華やかな話題に包まれた。展望台から花火を見下ろすことができる。主催は隅田川花火大会実行委員会。第35回の今年は、第1会場(桜橋下流~言問橋上流)、第2会場(駒形橋下流~厩橋上流)で行われ、花火の数は2万発、花火コンクールには10社が200発の工夫を凝らした花火で参加した。当日の見物客は95万人、事前予約客700人がスカイツリーから花火を堪能した。
 この日のスカイツリーのライティングは、江戸の心意気を表す「粋」。淡いブルーの光が川面に映え、450メートルの展望台から、屋形船から、ホテルから、地上からと多彩な楽しみ方ができる。現場の臨場感には及ばないが、われわれ庶民にとって上空を舞うヘリコプターからの映像、会場の多彩なゲストや解説付きのテレビの前で、ビール片手に講釈付きの見物席がベスト。初めて見るデザインもあり、盛大さだけでなく花火に「風情と粋」を感じるのは日本人のDNAであろうか?
 花火の起源はよくわからない。火薬が発明された中国で「のろし」にも使われ、やがて皇帝などが観賞用にも用いだしたという説がある。火薬は中国からアラビアに渡り、戦いの道具としてヨーロッパに広まった。14世紀頃、イタリアのフィレンツエで観賞用の花火が登場し広まったとされている。
 日本では徳川家康がイギリスの使者を引見した時に鑑賞し、その後、各大名も競って作らせたというが、軍事と関係があるため製法は秘伝とされた。
 ヨーロッパの花火は主に筒型で、観賞用に一方から眺めるのに対し、日本の花火は丸形で、打ち上げて上空ではじけると中の星が円形に広がる。人々が広く多方向から見物できるように発達したという理由が面白い。これからも全国で行われる花火大会、夏の風物詩を心ゆくまで楽しみたい。【若尾龍彦】

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