100周年を喜ぶ日活の佐藤社長(左)と中田監督
 数々の名作を世に送り出してきた日活映画の100周年を記念し、国際交流基金ロサンゼルス日本文化センター(伊藤実佐子所長)と南カリフォルニア大学(USC)は10月26、27、28日の3日間、同大学のノリス・シネマシアターで日活映画記念上映会を催した。イベントに先駆け25日、日本から日活の佐藤直樹・代表取締役社長とホラー映画「リング」の中田秀夫監督を迎え、祝賀レセプションが同基金で行われ、須賀正広・在ロサンゼルス日本総領事館首席領事をはじめ、ハリウッドの映画関係者らが出席する中、日活の100年の歴史を祝福した。
 ロサンゼルスでの開催は、ニューヨーク映画祭とパリのシネマテック・フランセーズで日活100周年を記念した上映会が行われたのを受け、国際交流基金とUSC映画学部のアキラ・ミズタ・リピット教授の協力のもと、映画の都ハリウッドがある当地でも開催が決定した。
 佐藤社長は「創立100周年を迎えこのような機会をロサンゼルスで迎えられうれしく思う」と述べるとともに、世界の映画産業の中心であるハリウッドに数多くの優秀な人材を送り出しているUSCで日活の歴史を紹介し、学生と映画について語りあう機会を与えてくれたことに感謝の意を表した。
 日活は今年、アクション映画「レッドクリフ」などで知られるジョン・ウー監督との共同制作を発表。ウー監督が幼い頃から日活映画の大ファンであったことが合作映画制作につながったという。今後世界の優れたクリエーターとの合作を積極的に進めていきたい日活にとって、USCでの上演会は未来のウー監督や鈴木清順監督と出会う機会であると位置付ける。
 佐藤社長はさらに、今回のロサンゼルス訪問で、日活が世界に向けて開かれた会社であると同時に「『優れた映画作品は時代と国境を越える』いうメッセージを伝えたい」と力を込めた。
 日活のこれまでの歴史は決して平坦なものではなく、さまざまな試練を乗り越え映画を作り続けてきた。長い歴史とともに培われたDNAは受け継がれ、日本の映画界に新たな才能を送り出してきた。その代表とも言えるのが中田監督だ。
 27年前、日活の映画作りに憧れ助監督として入社した中田監督は、「日活はほかの映画会社に比べ、監督に自由を与えてくれる風土が非常に強い」とその社風を称賛。「日活に入らなければ『リング』も『ダークウォーター』も生まれなかった」と語り、自らのキャリアにおける日活の存在の大きさを強調した。
 米国とイギリスでも映画製作を経験した同監督は、「日本やハリウッド、ヨーロッパ、アジアなど、さまざまな国の映画作りの文化がぶつかり合い、今後一緒に映画作りができるようになればいい」と映画界の将来を期待した。
 USCでのイベントでは26日に中田監督の最新作(未完成)の試写会が行われ、27、28両日は日活の過去の作品を上映するとともに、リピッド教授、中田監督、佐藤社長が参加したパネルディスカッションも行われ、学生と意見を交換した。 【吉田純子、写真も】


日活の黄金時代を築いた作品のポスターが飾られた会場で、中田監督の話を真剣に聞くハリウッドの映画関係者ら

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