政治の世界では理に適わない、無責任なことがまかり通る。
 近年の出来事でその最たるものは、衆議院ではいわゆる『一票の格差』がすでに違憲状態であるという最高裁判所の判断が示されていたのに、それが是正されることなしに12月に衆議院議員選挙が実施されたことだ。
 あろうことか、立法府が「司法敬うに足らず」「事によっては脱法もまた悪しからず」と国民に告げてしまったのだ。さらに悪いことに、こんな立法府の居直りを咎める声が国民のあいだにほとんどない。日本人の精神的、知的、あるいは良心的な衰退ぶりはここででも顕著だ。
     ◇
 石原「日本維新の会」共同代表がまだ東京都知事だったころに行った不用意な「都による尖閣諸島買い取り」宣言はどうだ?
 あれで、自動車や電子機器業界をはじめとする日本の産業界はいくらの金銭的ダメージを受けたのだろう? 数千億円? いや、長い目でみれば、数兆円という規模に達するのかもしれない。だが、石原氏がそのことを産業界に詫びたという話は聞いていない。
     ◇
 その石原氏はやはり都知事時代に強引に新銀行・東京を発足させたことがあった。同銀行はわずか3年間ほどで1000億円の赤字を抱えて、事実上、破綻した。追加支援資金も400億円は支出されたはずだ。都民の税金がそれだけ無駄に費やされたわけだ。
 なのに、これについても、石原氏が真摯(しんし)に詫びたというニュースは聞いたことがない。
 石原氏は霞ヶ関の官僚を目の敵にしている(ふりをしている)が、同氏の行動の無責任ぶりは官僚組織以上なのかもしれない。
     ◇
 とにかく…、12月の衆院選は無効だと言い出さないのがいまの日本人だ。政治がどんなに無責任でも、それはかまわないということなのだろう。悲しむべきことだ。【江口 敦】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *