2013年を迎えるにあたりまして、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
 暮れの本欄でも触れましたように、何か忘れ物をしたような気持ちのままで迎えた新年。それでも、アメリカは再選されたオバマ大統領が真価を問われる第2期目に入り、日本も自民党安倍政権が誕生して、日米関係に新たな動きが期待できそうな幕開けです。
 タイム誌が12月19日、恒例の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」にオバマ大統領を選出しました。オバマ氏は初当選した2008年にも選ばれており、2回目ですが、米国の文化、人口構成が歴史的な変化を遂げる中で、同誌は、「オバマ氏はいろいろな意味で新しい米国のシンボルであり、新しい国づくりの設計者だ」という趣旨を選定理由に挙げています。
 同誌のインタビューでオバマ氏は、「われわれは人々の違いを受け入れ、自分とは似ていない人たちを尊重する、より多様で寛容な国を着実に実現してきた。これこそが米国の強みの一つである」と答えています。
 多様性に富む社会には、新しい発見や体験があり、躍動感溢れる魅力的な社会を生み出す素地があります。しかしながら、違いを理解し、受け入れることの難しさは、世界のあらゆるところで大小さまざまな争いごとが起きていることでも明らかです。「言うは易し、行なうは難し」の部分があるのも世界の現実と言えるでしょう。
 それにつけても、私たちの周辺では次から次へといろいろな問題が生じています。こうしたさまざまな出来事に対応していくことが、生きている証しと言えるのかもしれません。
 私たちの一生は、「人生行路歩み難し」なわけですけれど、若い時の苦労は、過ぎてみますと意外と心地よい思い出に感じることもあるようです。
 ところで、ギネスブックによりますと、このところ長寿世界一が次々と変わり、昨年12月17日の時点で京都府の木村次郎右衛門さんが115歳で世界最高齢に輝いています。
 日本をはじめ、先進国の多くで少子高齢化が社会の大きな課題とされていますが、当地の日系コミュニティーには90歳を過ぎても自分で車を運転して出かける人を多くお見受けいたします。健康で長寿の人が増えるのは、社会が安定していることの証明にもなります。今年、卒寿をお迎えの大先輩の部屋に、額縁入りで左のような文言が飾られているのを見ました。
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 ―長寿の心得、人生は山坂多い旅の道。
 還暦=60歳でお迎えの来たときは、ただいま留守と言え
 古希=70歳でお迎えの来たときは、まだまだ早いと言え
 喜寿=77歳でお迎えの来たときは、せくな老後の喜びこれからよと言え
 傘寿=80歳でお迎えの来たときは、なんのまだまだ世の役に立つと言え
 米寿=88歳でお迎えの来たときは、もう少しお米を食べてからと言え
 卒寿=90歳でお迎えの来たときは、そう急がずともよいと言え
 白寿=99歳でお迎えの来たときは、ころあいを見てこちらからボツボツ行くと言え
 ―気はながく、心はまるく、腹は立てず、口をつつしめば命ながらえる。
    ◇
 まったく、その通りだと思います。「慌てる蟹は穴へ入れず」とも「亀の甲より年の劫(こう)」とも言います。早過ぎるお迎えには、迷わず皆で居留守をつかいましょう! 寛容で多様性に富む社会づくりに邁進するアメリカは、シニアの知恵を必要としています。【石原 嵩】

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