1月14日は「成人の日」、関東地方にも雪が降り、辺り一面白銀の世界となった。せっかく用意した晴れ着姿の成人女性はさぞ難渋したことだろう。しかし、雪と寒気は彼らの気を引き締め、多くの若者たちが将来の夢と目標を掲げ決意を新たにしたに違いない。
 山梨県は水晶の産地として知られている。明治期に、政府は文書には印章使用を義務付けた。全国行商の組織を持っていたこの地の人々は、地場産品・水晶を材料にした印章を全国に売り込んだ。
 この町の小学校では、6年生になると地元業者の協力・指導のもと、卒業前に自分の名前を印章に彫る。一字一字を噛みしめながら彫ることで、自分の名前に対する親の期待を感じ取り誇りを持つ。やがて社会人になってからもその印章は、名前への誇りと親への感謝を思い起こさせるだろう。
 先祖を敬い名を大切にするのは、古来どの民族も人間の基本として受け継がれてきた。誇りを持つことは同時に責任を果たすということである。
 他人に敬意を払い、なすべきことをなし、家族や共同体に責任を果たすことで初めて一人の社会人として認められ独立する。人は明確な目標を持った時に初めて大きな力を発揮する。
 1月28日、返り咲いた安倍新首相が国会で所信表明演説を行った。掲げる目標は「危機突破」、テーマは「経済再生」「震災復興」「外交・安全保障」の3点である。経済再生には施策として3本の矢、「金融政策」「財政政策」「成長戦略」である。
 政治家の最も大切な役割は、国民に希望を与えること、明確なビジョンと実施手段を明示することである。所信表明でこの二つは果たした。これからはその実現を見守ると共に、国民一人一人が自主的に自らの果たすべき責任を果たさねばならない。
 所信表明のおわりでは、「どうなるだろうかと他人に問いかけるのではなく、われわれ自身の手によって運命を開拓するほかに道はない」と芦田元首相の言葉を引用し、強い日本を創るのは私たち自身です、と結んで国民に奮起を呼びかけた。いわば、国民一人一人にも成人としての自覚が問われているのだ。【若尾龍彦】

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