「レッドソックスの経営陣は野球を愛してなどいなかった。彼らの最大の関心は、儲けることだけ。そのためにはセクシーじゃなければダメだと言い張った」
 今シーズンからクリーブランド・インディアンズを指揮するテリー・フランコナ監督が『レッドソックス回想録』で経営陣との確執を暴露している。
 「セクシーなチーム」とはなにか。とにかく、派手に活躍してメディアに騒がれる選手を集め、目立つプレーをするチーム。そのために経営陣は東部地区優勝が確実視されていた11年9月の段階で、そのシーズン活躍していた二人の「セクシーな選手」を他チームから引っこ抜いた。
 一人はタンパベイ・デビルズのカール・クリフォード外野手。もう一人は、サンディエゴ・パドレスのアドリアン・ゴンザレス一塁手。
 「優勝も視聴率も観客数も」狙った経営陣の万全の策だった。ところがシーズン終盤のこの補強策は裏目に出てしまった。
 この二人の加入で、それまでうまくいっていたチームのバランスが崩れてしまったからだ。
 フランコナはレッドソックス入団前にはマイナーやドミニカ共和国で選手の育成に当たってきた。異国での体験から言葉が不自由な松坂大輔や岡島秀樹には人一倍気を遣った。
 09年はメジャー開幕寸前のWBCで「侍ジャパン」の大黒柱として活躍した松坂が、大リーグ開幕後2試合連続で打ち込まれ、故障者リスト入り。しかも日本人記者に練習方法について不満を漏らした。
 「ピッチング・コーチのジョン・ファラレルは烈火のごとく怒った。松坂も言い返した。私の心臓はドッキンドッキンと音を立てた。・・・最後に松坂は深く悔いていた。それ以後、松坂が問題を起こしたことは二度となかった」(フランコナ)
 マイナーからのスタートだが、今一度、ヤンキースのイチローと対決するためにインディアンズを選んだ松坂。「不当解雇」したレッドソックス経営陣に一泡吹かせようと意気込むフランコナ。インディアンズが燃えている。【高濱賛】

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