大阪で毎年開かれている「関西加州会」は、カリフォルニアにゆかりのある人たちが集まる年中行事、今年は45人の盛会となった。幹事は元某商事会社のロサンゼルス支店長を務めたT氏ご夫妻。行き届いた配慮と分け隔てない明るい幹事ご夫妻の人柄がこの会が15回も続いている原動力である。
東京や他の地域でも、多くの加州ゆかりの懇親会がある。海外では業界や社会的地位を超え、競合同業者でも人と人とのお付合いができる。多民族社会で同じ日本人が寄り集まり本音で付き合ったという体験が、帰国しても親密な関係を持続させる。今年はロサンゼルス在住者も東京在住者も交じり合い、温かい交流の輪が広がって遅くまで談笑が続いた。
各々の自己紹介兼近況報告は、それぞれの経験と人柄がにじみ出てとても面白かった。年齢もシニアから現役で働き盛りの人、研修プログラムでロサンゼルスを経験し新人社会人で頑張っている若者まで多士済々。そのような出席者の一人が取組んでいるプロジェクトが紹介され、人目をひいた。
以前、京都のトミタ夢工場で作られた日本初のピュア・スポーツカー「トミーカイラZZ」は、イギリスに生産委託され206台が輸入販売された。ところが運輸省の保安基準の改正により400台の受注を残して終了した幻のスポーツカー。この伝説のトミーカイラが最新のテクノロジーを搭載した電気自動車として16年振りに蘇る。
母体は京都大学発のベンチャー企業、京都の部品メーカーやものづくり企業が共同開発した。シャーシーはトミーカイラのコンセプトを生かした新設計、ボディーは職人の手づくりによるFRPの一体成形。車両重量850kg、305馬力、100㎞加速3.9秒という2人乗りの電気スポーツカーだ。フェラーリ、ポルシェなどが100㎞5秒台の加速というから性能は目を見張るものがある。
それよりも、大学発のベンチャーに地元の部品やものづくり企業、退職したベテラン職人たちが協力し、目を輝かせ、泡を飛ばして議論し、夢中になって作り上げる姿が目に浮かぶ。日本もまだまだ夢があると感じた一夕であった。【若尾龍彦】