先日、ユタ州ソルトレークシティー郊外で、ある女性がストーカーの男に襲われ取っ組み合いになった。助けを求める女性の叫び声を聞き、外に飛び出して行ったのはモルモン教の司教(47)。しかしその時、彼はただの司教ではなかった。手には29インチ(74センチ)の日本刀が握りしめられ、女性を助けようと男に向かっていった。温厚な司教が勇敢なサムライに変貌した瞬間だった。
 司教は武道を教え、黒帯の腕前。日本刀は万が一の時身を守るため、常にベッドのそばに置いていたのだという。
 この事態に一番驚いたのはストーカー男だろう。見たこともないような大きな日本刀を振りかざした司教(この時司祭服は着ていなかったが)がサムライさながらのすさまじい勢いで迫ってきたのだから、さあ大変。人を襲っている場合ではなくなった。男はいちもくさんに車に飛び乗り、逃げていったという。
 ただこのストーカー男、突然のサムライの登場にあまりに度肝を抜かれたのか、ヘマをやらかした。逃げる際、いつも使っていたリップクリームを落としていったのだ。しっかりDNAサンプルと車のナンバーを抑えられ、あえなく御用となった。日本刀を持つと人にはサムライ魂が宿るのだろう。
 過去、現代を問わず、サムライを題材とする日本映画は多く、三船敏郎や勝新太郎、千葉真一など名だたる俳優たちがスクリーンの中で見事な殺陣シーンを披露してきた。こうしたスターたちの立回りを見て、サムライに魅了されたハリウッドの映画人は多い。
 親日家として知られるクエンティン・タランティーノ監督もそのひとり。映画「パルプフィクション」や「キルビル」など彼の作品には空手や殺陣シーンが数多く登場する。
 たとえ親日家でなくとも映画を見ていてサムライが日本刀を振りかざし、敵を撃退するシーンがあると、米国人男性の多くが「日本のサムライはクールだ」と賞賛する。サムライ魂は国境を越えて人を惹き付ける魅力があるようだ。【吉田純子】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *