高い失業率が続く昨今。大学の学費は上がり、なんとか卒業しても今度は就職先が決まらず、追い打ちをかけるように学生ローンの返済が。職が決まらぬわが子のために一肌脱ぐ親の姿もある。そうした中、「老後は悠々自適に暮らしたい」と設計を立てていた親たちの老後生活の雲行きも怪しくなってきている。
最新の調査によると、全米50州のうち48州で、高齢者が老後の資金不足に直面しているという。ファイナンシャル・プランナーは高齢者に対し、少なくとも退職前所得のおよそ70%の収入を確保するようアドバイスしているが、この基準を満たしているのはネバダ州(70.72%)とハワイ州(70.06%)の2州だけ。
米国の65歳以上の高齢者の平均世帯収入は3万5107ドル。これは45歳から64歳の平均世帯収入の57%に過ぎず、高齢者の生活が厳しい現状に置かれていることが浮き彫りになっている。
70%に達していなくてもそれに近い所得を確保できているのはアリゾナ州(68.10%)、ニューメキシコ州(66.89%)、フロリダ州(66.86%)の3州。一方、もっとも低かったのがマサチューセッツ州で、高齢者の収入は退職前所得の45・21%だ。
とはいえ、もっとも安定していると思われるネバダ州でさえ、高齢者の生活が必ずしも豊かという訳ではない。ただハワイ州は労働組合の力が強いことが幸いし、高齢者の収入は安定しており、多くの人が毎月年金を受け取っているようだ。
現在、高齢者人口の半分にあたるおよそ2000万人が貧困生活を余儀なくされ、なかでも黒人やヒスパニックの女性は退職後、経済的に困窮する傾向が強い。
だが楽しい老後生活を諦めてはいけない。参考までに、退職後の年金生活にもっとも適しているのは、温かな気候に恵まれたテネシー州だそうだ。生活費や税金も安く、さらに医療制度も整っているとのこと。自分が好きだと思える環境でのんびり老後を送る姿を想像するだけでも、目の前の雑事が楽しいものへと一変するかも。【吉田純子】