ドンドン、ドドン。太鼓が響きわたる。体がその音に本能的に共鳴し始める。日本人の魂がのっそり頭をもたげる。ドン、ドドンドン。音は体の芯をつかんで、揺さぶる。いつ聞いても、じわじわと力が湧いてくる。おい、起きろよ。へこたれた時には横っ面をひっぱたいてくれる。
6月15日にオレンジカウンティーの田中農園で開かれた、東北震災復興支援イベント。所属する混声合唱団OCFCも応援に駆けつけた。「花は咲く」「ふるさと」懐かしい曲を歌った。
当日は「農園を歩こう」と銘打ち、園内が一般に開放された。青空の下、延々と続く野菜畑を歩くたくさんの参加者の姿があった。ペットの犬もカメラマンも。人々が迷わないように、要所要所ではテントがはられ、採りたての野菜を試食させてもらえた。「わあ、あまーい」「おいしいね」歓声と笑い声がはじける。自然の甘さが彼らの記憶に残る。
野菜はこうやって作られるのだ。まざまざと野菜作りの現実を見ることで、たくさんの事を教えられた。広大な土地、照りつける太陽、水の施設。労働と人手をかけて、野菜が成長するのをじっと見守る。そしてようやく収穫できる。忍耐の要る厳しい仕事だ。
農業に従事してきた一世や二世の方々の労苦を思う。彼らが道を作ってくれたからこそ、私たちの今がある。これからは農作物を粗末にはできない。こんなに手間ひまがかかっているのだから。
背丈を遥かにこえた巨大なひまわりが一列に並び、首をたれて、こんにちは、と笑いかけてくれた。見渡す限りのさとうきび畑の上を風がざわざわと通りぬけ、鳥が空に駆け上がる。夢のような美しい風景が現実の厳しさをいたわる。
メーンテント周辺にはたくさんのブースが出店し、自家製食物が売られる。子供たちが作るかき氷も好評だ。農園でできた野菜が飛ぶように売れる。活気がある。私もコーンと真っ白なマウイオニオンを買った。おいしいぞ。この日の売上金は全て被災農家に寄付されるという。
ドドン、ドンドン。日本人の底力が敲(たた)きだされる。負けるなよ。立ち上がれよ。【萩野千鶴子】