創立33年を迎える日本民謡の竹嶺会ロサンゼルス支部(西屋国弘会長、支部長=木津嶺富師、木津嶺志津師)は2日、木津竹嶺、照子家元夫妻を招待し、モンテベロで名取披露の宴を盛大に催した。
会場には、約200人の招待客が集まり、この日披露された新師範の木津嶺良(高野良子)さん、木津嶺紅(松元典子)さん、木津嶺式(アイリーン・ベッドフォード)さん、木津嶺由(岩下由美子)さん、木津嶺美奈(ラーセン・美奈子)さんの5人、新準師範の木津嶺幹(コルブ・ジェニファー)さん、木津嶺景(水島グレイス)さん、木津嶺彩(摺木ナンシー)さんの3人、また新名取の横尾嶺幸(横尾幸子)さん、上村嶺佳(上村佳)さん、是枝嶺梅(是枝ひさの)さん、三浦嶺佐智(三浦佐智子)さん4人の計12人が芸を披露した他、師範代の会員や家元をはじめ、家元の次女で日本コロムビア所属の民謡歌手、木津かおりさんの歌や三味線を楽しんだ。
このほど師範に昇格した木津嶺式さんは、嶺志津師の長女。物心ついたころから琴やピアノ、ハープなどさまざまな音楽に触れる中、母親の民謡に対する熱意に引き込まれた。3世の嶺式さんは、「民謡を学ぶことで、音楽だけでなく日本各地の生活様式が伝わり勉強になる」といい、日本を訪れるたびに各地とのつながりを感じるという。
嶺式さんの娘で、嶺志津師の孫にあたる木津嶺幹さんは5歳から民謡を習い始めた。この日、準師範に昇格し、「4世で日本語を話さないが、『音楽に国境はない』というように言葉が分からなくとも、歌の背景を理解できれば文化は学べる」として、民謡は自身と日本を結びつける貴重な存在だと話した。
また、同じく準師範に昇格した木津嶺彩さんは、17歳の時にたまたま耳にした嶺志津師の三味線に魅かれ入会した。同会のモットーでもある「継続は力なり」に支えられ、高校、大学とカリキュラムなどで忙しくなる時期も乗り越え、現在に至る。
「先生は音楽を教えてくれるだけでなく、その歌の歴史や文化背景なども分かりやすく説明してくれ、昔の日本がここに生きていて、それを(次世代に)つなげていく役割を自分も担っているということが、自分にとって民謡を続ける最大の魅力」といい、今後師範代を取得した際には、国籍、人種など関係なく、より多くの人に民謡の素晴らしさ、日本の温かみを伝え広めていきたいと、力強く抱負を語った。
嶺志津師はこの日、手塩にかけ育てた生徒12人がそれぞれ立派に昇格した姿を見つめ、「モットーに添って続けてくれたことがとにかく嬉しい」と目を細めた。33年前の創設以来、現在も無料で指導を続け、多くの生徒を育て上げてきた。最近は、3世や4世といった日本語を話さない生徒も増えてきたが、「民謡は、おじいちゃんやおばあちゃんなど、世代を超えた人とのつながりを持てる貴重なコミュニケーション・ツール」だとし、生徒には、先祖があって初めて自分があるということを忘れないように、と指導している。
さらに、創設から33年間、独立せずに一貫して支部の立場を貫いてきたのには理由がある。それは、3世、4世の生徒が増えるにつれ日本とのつながりが薄れていく中、「生徒に日本とのつながりを持ってもらいたかったから」。支部でいることで家元とのつながり、日本民謡協会とのつながりを持つことができ、日本を学ぶより多くの機会を生徒に提供できるからだという。
竹嶺会の詳細は木津さんまで、電話310・618・6845。【中村良子、写真も】
