敬老引退者ホームで前列の居住者から戦争体験などを教わった(後列左から)安田愛さん、峰松歌織さん、市川忠行さん、三宅祐二さん
 日本で遺児の支援活動を行う非営利団体「あしなが育英会」からロサンゼルスに派遣された大学生4人が精力的に研修をこなしている。各所を訪問し、貴重な経験を積む20日間(3日から22日)のプログラムに意欲を示し、収めた成果を将来のそれぞれの道で役立てる。
 5日間の敬老ホームでの奉仕を終え、研修は本格化し、USCのキャンパス、LA警察学校、LA港の見学や、重度の脳神経患者のお見舞いをする。日系諸団体への表敬としては、研修生の受け入れ先の南加日系商工会議所やLTSC、全米日系人博物館、日本総領事館、タナカ農園などを訪問する。二世週祭参加を楽しみにしており、七夕まつりの「故郷ブース」でボランティアをし、パレードには南加日商会頭とオープンカーに同乗し、街頭音頭でも踊りの列に加わる予定だ。
 米国訪問は参加者すべてが初めてといい、生活習慣など異文化に触れながら多くを吸収し、視野を広げている。見知らぬ人から「ハロー」とあいさつされるなど「明るくて、とても親切で気持ちがいい」と口を揃え、湿気が多く酷暑の日本と打って変わり当地の涼しく快適な気候も満喫している。
敬老の居住者とドミノゲームに興じる研修生
 研修生は、安田愛さん(大阪大谷大2年、薬学部・薬学科)、峰松歌織さん(駒沢女子大3年、人文学部・国際文化学科)、市川忠行さん(山梨大4年、工学部・応用化学科)、三宅祐二さん(北海道文教大4年、人間科学部・こども発達学科)。父親を亡くした4人だが、逆境にめげず、勉学に励み大学進学を果たした。立派な社会人になって女手一つで育ててくれた母親への孝行に努めることだろう。
 安田さんは、母親が持病の治療で服用した薬の副作用が原因で体に変調をきたしたことから薬剤師を志し「薬のことを正しく説明できるようになりたい」と話す。米国の日系史に関心を示し「強制収容所など、私たち日本人が知らない戦争の裏側を見てみたい」と全米日系人博物館の見学を心待ちにしている。
 大学の英語の授業で峰松さんは英語圏出身の教師と話をし語学力を磨き、ゼミでは米国史を学ぶ。米移民史に興味を持っており「アメリカに来て日本では無縁だった、いろんな人種、いろんな民族の人がいることが確認できた」とダイバーシティを肌で感じている。「英語力を付けて、コミュニケーション能力を高めたい」と、ひと夏の成長に意欲を示す。
 市川さんが結晶工学を学ぶようになったきっかけは地元山梨が、水晶の名産地であることから。大学では水晶などを原料にした人工的無機物の研究に没頭し、卒業後は山梨大大学院への進学を志望。「土壌があって、育てる文化があって、産業が発展する」という持論を持ち、研修では地場産業を支える文化を知ることと、論文執筆に不可欠な英語の習得に努める。
 三宅さんは、小6の時に男性保育士をテーマにしたテレビドラマ「よいこの味方」を見て「感動して号泣し、保育士になりたいと思った」といい、抱き続けた夢を来春実現させる。「子どもと遊ぶのが好きで、成長を見るのが楽しい」と目を輝かせ、櫻井翔が演じたドラマの主人公のように子どもたちに優しく接する考えを示す。研修では小学校の見学を楽しみにしている。
 今回の研修の共同実行委員長の木下和孝・南加日商上級副会頭は、研修生について「4人とも明るくていい生徒ばかりだ。英語が分からなくても積極的に話しかけ感心する」と評価する。「これからもたくさんの経験を積んで、立派な大人になって社会に貢献してほしい」とエールを送った。【永田潤、写真も】
研修の共同実行委員長の半田俊夫・南加日商元会頭(右端)と研修生

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