週数回は夕食を作るようになって足掛け10年になる。
最初は、簡単な卵焼きや味噌汁ぐらいしか作れなかった。が、その後、料理の本を見ると買い、新聞の料理メモなども丹念に切り抜いてきた。
「もっと便利なものがありますよ」と、インターネットの「クックパッド」の存在を伝授してくださったのは、伊原純一ロサンゼルス総領事(当時、現在外務省アジア大洋州局長)だった。
伊原さんも料理がお好きらしく、当時日本に住んでいた息子と料理についての情報を交換していた。そこで見つけたのが「クックパッド」。これを参考にして作り、美味しいと息子さんに教えていたという。無論私もすぐ飛びついた。
作りたい料理を検索する。たとえば豆腐料理。すると、韓国風豆腐サラダ、豆腐ステーキ・イン・豚ネギソース、豆腐とアボカドの和風サラダ…、といった具合に作り方がたちどころに出てくる。
そんな「クックパッド」にけちをつける御仁が現れた。
週刊朝日の連載コラムで、演出家の河原雅彦さんがこんな不満をぶちまけたのだ。
「なんつうかなー、人様の味覚に合わせたレシピを丸ごと使って喜んでるんじゃなく、もっと料理に対してクリエイティブであってほしいと切に思う」
「もし、クックパッド至上主義な女が嫁になって、人様の家庭のレシピばっかり毎日食卓に並んだら本当イヤ!」
掲載されるや、ネット上で疑問を呈するコメントが殺到。「他人のレシピって言うけど料理本やテレビの料理番組はどうなるの?」「自分流の料理を作るにしても基礎は必要でしょ」
筆者のような初心者には、割って入れない「趣味人対主婦」論争。おそらく、河原さんは「試行錯誤して苦労しないと、料理はうまくならないよ」と訓を垂れたのだろうが…。
それに舌は皆それぞれ違う。作ってみて、食べてみて、自分の舌に合わなければ微調整すればいい。これは何も料理に限らない。先輩の真似をし、いいところを盗む。盗んで自分のものにしていく。
もっとも、それが未だに出来ないでいる。【高濱 賛】