秋のこの時期は、大学アメフトで盛り上がる。プロに比べ、予期できぬ試合展開が断然面白い。青春真っ只中、みなぎる力でひた向きにプレーする若者の姿はすがすがしい。
 ところで日本ではまれだが、アメリカでは学生選手が頻繁に転校する。理由はさまざまだ。学業成績や品行が悪く退学を余儀なくされたり、コーチと合わなかったり、中にはホームシックになったり……。とりあえず2年制ジュニア・カレッジでプレーして注目を浴び、4年制大学へ転校する場合もある。
 プロを目指す選手は、大抵の場合、試合に出るチャンスをなくしたら、「転校」を決断するだろう。
 NCAA(全米大学体育協会)という組織がルールを作り、運営管理する。4年制大学間の転校は、特例を除き、基本的には1年間プレーできない。新しい環境に慣れるのは大変だろうし、学業で遅れをとらないよう時間を与えるという配慮からだ。「転校」は、勇気もリスクも伴う。人生を左右する重要な岐路だ。
 昔のことだが特筆すべき例をあげよう。ドラフト1位でダラス・カウボーイズに入団し、スーパーボウル3度優勝、現在はスポーツキャスターのトロイ・エイクマンだ。UCLA出身だが、その前はオクラホマ大学に在学した。レギュラーだった2年生の時に怪我して戦線離脱。先発の座を奪われた。新入生が大活躍し、その年全国制覇を成し遂げてしまった。それゆえもう出番はないと思いUCLAに転校。1年間は試合に出られず、3、4年生で結果を残した。
 大学は、基本学問の場だが、大学スポーツはビッグ・ビジネス。選手、チームが活躍し大学名が売れれば、絶大な宣伝効果となり、入学希望者が増える。
 チームスポーツだけど、個人の選択、自由を尊重したアメリカ的な「転校」制度は、若者に「チャンス」を与えるシステムだ。
 ちなみに選手に限らず、コーチもプロに引き抜かれたり、他の大学に誘われ転校する。昨年メジャー大学125校のうち30校のコーチが変わった(24%の変更率)。ある統計によると、平均在職年数は約4年らしい。意外な大学アメフト事情である。【長土居政史】

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