新年が明けるとともに、毎年新しい法律が施行される。身近なところでは、ロサンゼルス市内の大型スーパーマーケットから買い物用プラスチックバッグが姿を消した。その背景には、環境や生態系を崩すプラスチックバッグをなくし、環境保護につなげようという考えがある。
 もう一つ、気になる法律が加州で施行された。「火を通していない食べ物を提供する際、料理人は手袋を着用するか、トングなどを使用しなければならない」というもの。すしや刺し身を扱う料理人をはじめ、お酒にライムを搾ったり、チェリーを乗せるバーテンダーも含まれる。
 料理人に手袋着用を強制する法律は決して珍しくない。現に、ネバダ州やニューヨーク州などではすでに適用されており、有名サンドイッチチェーン店などでは従業員に手袋の着用を徹底している。
 このような法律が施行されるのは、食中毒などを極力避けるためにほかならない。米疾病対策センター(CDC)の調査によると、米国内で食中毒や汚染された食事により年間4800万人、約6人に1人が病気にかかっており、うち約半数がレストランでの食事から感染しているという。
 大量生産する食品工場内などでの手袋着用は理解できるが、料理の腕だけでなく、食品の扱いや衛生についてきちんと教育を受け、修業を積んできた職人やプロの料理人に対する規制には大きな疑問が残る。
 同法律は1月1日から施行されたが、厳密には半年間の移行期間が設けられており、保健局の取り締まりが本格的に始まるのは移行期間終了後からになるという。しかし施行されてしまった今、法律に従わざるを得ない。
 今後は、料理の一工程ごとに各レストランで大量の手袋が破棄されることになる。ごみ箱に捨てられた手袋の山を見た時、果たして環境保護団体の人はどう思うのだろうか。買い物用プラスチックバッグのように、地中に埋めると生物分解されて溶ける特殊な手袋が発売されるようになるのか。今後の動きを見守りたい。【中村良子】

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