桜が日米の各所で咲き誇るぽかぽか陽気の中、全米で自動車レースの各カテゴリーが開幕し、ファン待望の胸躍るシーズンがやって来た。そして、アメリカ最高峰の「インディカー・シリーズ」の今季第2戦「トヨタ・グランプリ」が今週末、ロングビーチで開催される。地元で開かれる貴重な機会なので、ぜひ足を運んで観戦してもらいたい。
 春の風物詩としてすっかり定着した同グランプリは、今年で40回目を数える伝統を誇る。始まりは、ロングビーチ市が地域活性化のために1975年に招致したもので、今では南カリフォルニア最大のイベントに大きく成長し、グランプリウィークエンドと呼ばれる3日間は、計20万人以上が訪れる。地元経済が潤うばかりでなく、売り上げは青少年の教育プログラムにも使われ、社会貢献も果たし、開催の意義は大きい。
 イベントは、メインのインディカーのほか、さまざまなレースが繰り広げられる。有名人が市販スポーツカーの改造車をドライブする「セレブリティ・レース」には、ハリウッド映画スターや芸能人などが出場し華やかさは増す。コンサートなど各種イベントも開かれ、終日盛り上がる。
 インディには、これまで、日本の国内王者などトップドライバーがシーズンを通して参戦し挑戦した。だが、誰1人として勝つことができず、悔しかった。日本人にとっては米ゴルフツアーで1勝するよりも難しいとされる中、昨年のロングビーチで佐藤琢磨選手が初優勝し、日本では「歴史的快挙」と、たたえられ、うれしく思った。
 佐藤選手は、世界最高峰のF1で約6年走ったものの優勝できず、活路をインディに求めた。新天地アメリカでもチーム体制に恵まれなかったが、不屈の精神で栄冠を手にした。人の気持ちが分かる苦労人は、東日本大震災で心を傷め、被災者に困難を克服してほしいと、救済のための活動「With you Japan」を立ち上げた。感心するのは、震災から3年たった今シーズンもマシンにこのメッセージを記し、日の丸を背負って走る。みんなで応援したい。【永田潤】

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