仕事の関係上、アメリカ社会における日本文化の普及継承には、ささやかながら努力しているつもりである。
 ところが最近、アメリカ人、特に若年層が関心を寄せる日本文化に疑問を持ち始めた。
 日本語クラスの生徒に日本語学習の動機を尋ねると「アニメをもっと日本語で読んで理解したい」という答えが結構多い。視覚から入って生まれた興味が、言語の理解へとつながっていくのは素晴らしいことである。
 先日、インディアナ州はフォートウェインの「桜祭り」に出演した日本舞踊のグループに同行してボランティアとして参加してきたが、会場でとかく目につくのは群れになって歩くコスプレ民族(?)。
 髪の色一つ取り上げてみてもホットピンクに紫、ネオングリーン、真紅から玉虫色、中には2~3色の染め分け手綱と派手なことこの上ない。
 童話の中のお姫様や王子様、犬、猫、パンダからゴジラ紛いの怪獣の装い、コスプレとは早く言えば仮装行列です…よね。
 コスプレ関連行事は一般に反応が早く参加者を動員しやすいそうだ。それかあらぬか、各地の日本企業もこの種の人気行事には協力しているようである。
 昨年の地元の盆踊りにも相当な数のコスプレ民族が参加していたことを思い出した。
 理由が何であれ彼らが日本に興味を持ち理解してくれるのは有難いのだが、コスプレ止まりでこれぞ日本文化と言われると、素直に肯いかねる。
 無い知識を絞り出して茶道や華道の精神を語り、歴史を語り、日本舞踊が歌舞伎と同じではなく、日本料理が寿司、てんぷら、ラーメンだけでないことを説き、下手な英語に鞭打って「私は」と「私が」の違いを話していることが何となく空しくなる。
 文化そのものが時代と共に変わってゆくことは百も承知しており、それゆえコスプレも文化には違いないが、私のようなシニア世代から見ると、「現実からの逃避」という気がしないでもない。
 皺だらけのピンクのドレスで道端にべったりと座り込みラムネを飲んでいるコスプレ信奉者たちの日本文化理解が、何年か後にはいま少し深いところまで届いてくれればと望みたい。【川口加代子】

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