訪日プログラム前に研修を受ける生徒32人と国際交流基金ロサンゼルス日本文化センターのスタッフ
訪日プログラム前に研修を受ける生徒32人と国際交流基金ロサンゼルス日本文化センターのスタッフ
 東日本大震災の被災地東北地方を中心に各地を訪問する文化交流プログラムに参加する米国の高校生32人が8日、ロサンゼルスから旅立った。生徒は16日間の滞在で日本語と日本文化を学ぶとともに、被災者とふれ合い、日米の懸け橋となることに期待がかかる。

 プログラムは、JETプログラムで訪日し、震災で犠牲となった米国人英語教師テイラー・アンダーソンさんとモンティ・ディクソンさんを顕彰する目的で2011年から国際交流基金が毎年催し、今年で4回目。参加資格は、日本語を2年以上学習する高校生で、規定の語学力が求められる。全米から応募があった。
 2人の英語教師は、教え子や同僚教師、地元の人々から愛された。一行は、2人が暮らした宮城・石巻と岩手・陸前高田を訪れ、足跡をたどる。親善大使としての重要な役目をこなし、学校訪問で生徒と交流し、陸前高田市役所で行なわれる高校生のサミットでは、東北の復興と発展をテーマに話し合う。また、書道や茶道、いけばな、太鼓など日本の伝統文化・芸術を学ぶ。

グループディスカッションを行い、日本について知識を深める生徒たち
グループディスカッションを行い、日本について知識を深める生徒たち
 生徒は出発前に、国際交流基金ロサンゼルス日本文化センターで研修を受けた。津波が町を襲うビデオや写真を通し、震災の大きさをあらためて思い知り、被災者の生活や被災地の復興についても学んだ。また、アンダーソンさんの父とディクソンさんの姉から故人の功績を学んで激励を受け、2人の遺志を受け継ぐことを確認した。
 参加者のクレア・ノードさん(16)は日本語を2年間、トム・オードネルさん(17)は3年間学んでおり、ともに初の訪日に興奮した様子で「勉強した日本語を日本で試したい」と口を揃える。ノードさんは2教師に感銘を受けたといい「とてもすばらしい業績を残したと思う。今の私には、まねできないことで見習いたい」とたたえ、プログラムでは「小中学生との文化交流が楽しみ。そして震災から3年経っても困難な生活を送っている人々と話して元気にしたい」と述べた。オードネルさんもまた震災に心を痛め「災害は誰にでも降り掛かる。アメリカ(地元のニュージャージー州)から7000マイルの遠く離れた東北の被災者を励ましたい」と思いやった。「日本では友達を作って、日本とアメリカの社会や文化、習慣の違いと共通点を見つけ、互いの夢や価値観を分かち合いたい」と意欲を示した。2人はともに進学を志望し、卒業後は日本での留学や就職を希望する。さらに、親日の先輩である2教師のようにJETプログラムを通した訪日も考えているという。
 アンダーソンさんの父アランさんは、被災地の復興を願い、テイラーさんの記念基金を設立した。愛娘が愛した石巻を6度訪れ、テイラーさんの教え子の成長を楽しみにしている。今回のプログラム参加者への期待は大きく「日本が大好きだったテイラーが経験した言語交換や文化交流など同じことを経験して、娘の遺志を受け継いでもらいたい」と語った。【永田潤、写真も】

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