カメラを首に掛け、ファインダーを覗くことなく撮影する原美樹子さん
カメラを首に掛け、ファインダーを覗くことなく撮影する原美樹子さん
 東京を拠点に活動する日本人フォトグラファー4人によるグループ展「In Focus: Tokyo」が、ゲティ・センターで開催されている。東京の町並みや人々を収めた4人の作品は、ゲティ・センターのコレクションにされ、展示では約40点が披露されている。出展者の1人の原美樹子さんが国際交流基金の招きで来米し10月9日、同基金のロサンゼルス日本文化センターでレクチャーを開いた。

 レクチャーで原さんは、スライドを使って作品を紹介しながら、撮影スタイルである独自のスナップショットと自らの写真観について紹介した。
 原さんは、慶応大を卒業したものの就職せず、写真専門学校で基礎から学んだ。作品作りは、雑踏の中に出かけ「テーマを決めず、被写体を限定することなく、作品にメッセージを込めることもない」。そのためか「被写体に特別な思い入れはない」という。「街角ですれ違った人々の何気ない姿や、日々自分の前をかすめて消えて行った事物」を収めたスナップショットは「偶然の集積であり、その偶然に積極的に身を委ねる。シャッターを押したのは私だが、私はそこに偶然に居合わせただけ」と話し、あくまで自然体である。
 愛機の6×6判カメラは「ファインダーは覗かず、フレームの隅々を使うことはしない」。構えることなく、首からぶら下げてシャッターを切る手法について「ファインダーを覗かないことを担保に、ある種の自由を獲得できる」と説いた。
 「なぜ写真を撮るか」という問いに、自身の明確な答えを見出しておらず、「そこに答えがないから、探そうとすることこそ、私の写真かもしれない」と独特の表現で述べた。現在主流のデジタル写真を認めつつ「フィルムカメラで撮り続けたい。透明な存在で、淡々と撮り続けていきたい」と、締めくくった。
 原さんは、ゲティ・センターについて無知だったそうで、美術館を初めて訪れ、その規模の大きさと、目にした他の数々のコレクションに圧倒されたという。「自分の作品がゲティのコレクションにされたことに驚いた。写真が1人でに歩いていったようで、信じられない。これを励みに、頑張りたい」と話した。
 ▽ゲティ・センターでの写真展の出展者と作品については次の通り。
 長野重一 1990年代後半の下町で暮らす人々を白黒写真8点に収めている。電車や東京独特の狭い道を歩く人々やミニバイク、桜や結婚式など。
 瀬戸正人 90年代後半から2000年代に撮影したカラー写真9点。若い恋人が、ベンチに座ったり、野原に寝そべって寛いでいる表情をとらえている。
 森山大道 白黒ポートレート9点は、夜の新宿を舞台にモデルは女性。セルフポートレートもあり、おもしろい。
  原美樹子 通学や通勤などで、駅や町を歩く女性を写したカラー写真12点。90年代半ばから04年までに撮影された。
 写真の展示は12月14日まで。ゲティ・センターの入場は無料。ホームページ―
 www.getty.edu
【永田潤】

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