新年特集記事の取材で、障害のあるきょうだいと育った健常の子どもたちにインタビューしている。障害児の世話に奮闘する親を陰で支え、きょうだいのよき理解者として寄り添ってきた彼らが持つ「優しさ」や「思いやり」「違いを受け入れる心」は、われわれも学ぶべき教訓だ。
取材では、差別のない世の中を目指し、自分にできることを見つけて励む若者5人に話を聞いている。日本の大学に留学している子もおり、日本語を流ちょうに話し、読み書きも問題なくできるが、アメリカ人の彼女が見る日本の社会と障害者をとりまく環境は、とても興味深い。
すべてが時間通りできっちりし、礼儀正しく秩序ある日本の社会に憧れて留学を決意した彼女は、初めて日本に住んでみてその裏側を知ったという。それは、「社会がきっちり完璧に機能しているからこそ、日本人は他人に対しても完璧を求める」ことだという。
彼女は学校近くのコンビニエンスストアでアルバイトをしており、実際ちょっとした間違いに対してお客さんから怒鳴られることは日常茶飯事という。先日は、スパゲティを購入した人に誤って箸を渡してしまったところ、「こんなもので食えるか!」と、店中に響きわたるほど大声で怒鳴られた。また、レジに時間がかかってしまった時は、スーツを着た若い女性客に「お待たせして申し訳ございませんでした」と商品を手渡すと、「死ね」と捨てぜりふを吐かれた。
大学でも、他の人と違う人や変わった考えを持っている人に対し、集団で悪口を言う光景がよく見られるそうで、「みんなが普通で、みんなができて当たり前と思っている人が多い。自分と違う見た目の人や、違った考えを持っている人を受け入れられるようにならなければ、障害者などに対する差別もなくならないと思う」と話してくれた。
埼玉県で起きた全盲生徒傷害事件後、「ラッシュ時に電車に乗るな」などといった障害者に対する批判の声もあったといい、社会的弱者への理解と差別撲滅にはまだまだ時間がかかりそうだ。【中村良子】