師走に入ってから、暮れ、年末、年の瀬、仕事納め、忘年会などと耳にするだけで、慌ただしさを感じさせ、暇で平穏な時でさえも、日本人だからだろうが、焦燥感に駆られる錯覚に陥ることがある。おせち料理作りや年賀状書き、大掃除などと忙しく、迎春準備を万全に整える日本には劣るが、ここアメリカでも年内に終わらせねばならない仕事に追われている人も多分にいるようだ。
 だが、アメリカの同じ時期の生活は、文化や宗教が異なるため事情はかなり違う。このホリデーシーズンは、サンクスギビングデーから本格化する。その後はクリスマスソングが、あちらこちらで聞こえ、雪に無縁のロサンゼルスで降った気分にさせてくれたり、サンタクロースがトナカイに乗ってやって来るような風情が漂い、気持ちを穏やかにしてくれる。クリスマスは家族団らんで過ごしたアメリカ風と打って変わり、元日はお餅やお節を食べ、ゆっくりと純和風で迎えるのも味がある。
 そしてこの時期はまた、あれやこれやと、1年に起こった幸、不幸を振り返るものだ。就職に結婚、出産、新居を構えた人などは、満足感に満ち溢れていることだろう。それとは逆に、病気やけが、不幸に遭ったり、落ち込んでいる人は、もうすぐ始まる新年から心機一転で臨み、次こそはいい年を送ることを願いたい。この時期はまた、1年の経過がつくづく早く感じる。道理で人が年を取るのも早く感じるわけである。
 来年は、戦後70周年を迎える。この大きな節目の記念行事は例年よりもひと際大きく催して、英霊の鎮魂を祈るとともに、平和70周年記念に感謝したい。そして、干支は馬から羊へと引き継がれようとしている。おとなしく、かわいい羊のように、平穏無事な年でありたい。
 今年もあと数日を残すばかり。年越しそば、みかんを食べながら、紅白歌合戦を見て、除夜の鐘を聞いて過ごした日本に思いを馳せ、年末年始の休日は、食べ過ぎ、飲み過ぎ、車の運転に気を配り、それぞれの行く年来る年を迎えてほしい。よいお年を。【永田 潤】

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