秋月胤永作「戦後懐を述ぶ」を吟じる大迫国浄師範
秋月胤永作「戦後懐を述ぶ」を吟じる大迫国浄師範

仁田尾国康師範(右)から感謝の盾を授与された岡村前地区理事長
仁田尾国康師範(右)から感謝の盾を授与された岡村前地区理事長

 国峯流詩歌吟詠・峰月流吟舞「尚道会」の南加地区(計7支部)は26日、春季吟詠大会をロングビーチにあるハーバー日系人会館で催した。会場には、無号から師範代の吟士約30人が集まり、ステージ上で日々の練習の成果を発揮するとともに、他支部の先生や会員らの吟に熱心に耳を傾けた。

 昨年11月に開かれた南加地区理事長改選で2015年度の新理事長に谷口国瑞師範が選ばれたが、この日はあいにく体調を崩して欠席。代わりに、前地区理事長の岡村国定さんが司会進行を務めるとともに、谷口理事長から預かった開会の辞を代読した。
 先亡者に黙とうが捧げられた後、仁田尾国康師範の先導により、杉田国峯作の「尚道会会歌」を全員で吟じ、精神を整えた。
 また、昨年まで南加地区の理事長を務めた岡村さんに対し、同会への尽力に敬意を表し、感謝状が贈呈された。
 続いて行われた吟詠大会では、「無号」「初伝」「中伝」「奥伝」「皆伝」「総伝」「準師範」「師範」と順に吟士が登壇し、堂々と詩を吟じた。
 この日、92歳と高齢ながら現役の吟士として力強く、米村竹窓作「大楠公の墓に謁す」を披露した2世の今泉国泉さんは、約9年前に友人で同会の吟士でもある真中国姯さんの誘いを受けて入会。始めはあまり興味がわかなかったというが、練習を重ねるにつれて詩を通じて学ぶ歴史に興味が湧き、「日本語学校で習った歴史的人物の名前などが出てくると、もっと学びたいという気持ちが出てくる」と、面白みが増していったと話した。

杉田国峯作「尚道会会歌」を斉唱する同会南加地区の会員
杉田国峯作「尚道会会歌」を斉唱する同会南加地区の会員
 今泉さんを誘った真中さんもロサンゼルス生まれの2世。戦時中はアリゾナ州のポストン収容所に送られた経験を持つ。物心付いたころから踊りが好きで、吟舞を習おうと尚道会の門を叩くと、宗家から「詩吟から始めなさい」と言われ、吟をたしなむようになったという。その後吟舞も習い、若い頃は活発に披露していたが、現在は体調を考慮して吟に徹している。この日は丘灯至夫作「日本賛歌」を吟じ、「詩吟は続ければ続けるだけ楽しみが増える」として、これからも体が続く限り、友人の今泉さんと吟じ続けたいと話した。
 南加、北加両地区を含む尚道会の副理事長を務める河合国将さんは、1998年に入会。この20年弱の間に会員数が半減しており、会の存続を心配する。河合さんは、詩吟にある「古いイメージ」が若者を遠ざけているとし、今後は題材に小学唱歌などを取り入れるなどし、「詩吟の伝統的、歴史的部分は残したまま、もう少し若者にも取っつきやすいように多少の変化を加える必要がある」との考えを述べた。また、詩吟には「内蔵の活性化」「ストレス解消」「歴史や漢字の勉強」など若者にとっても多くの魅力があるとして、継承する意義を語った。
 吟詠大会では、師範代の吟詠終了後、宗家松口月城氏の遺吟である「南極の犬」を全員で聞き、あらためて吟道精神を養うよう心に誓った。
【中村良子、写真も】

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