友人から小さな樽入りの梅干しをいただいた。日本では梅は毎年6月ごろ仕込まれるというので、今回いただいた梅干しは昨年以前に仕込んだ貴重品ということになる。近年、市販の梅干しには「しそ梅」「昆布梅」「鰹梅」など、各種調味の施されたものが出回っているが、今回、いただいたのは伝統的な梅干だ。日本人にとってうれしい贈り物のひとつだ。
 梅干しといえば、「酸っぱい」食品の代表だ。日本人なら誰でもなじみがあり、特にお弁当やおにぎりにとって必需品といえよう。梅干しの酸っぱさには、健康効果がたくさん詰まっているといわれ、疲労回復、血栓防止、血管の老化抑制、ダイエット、悪酔い防止、殺菌効果などだ。
 数年前の秋、私はこの欄で柿の話題を取り上げたことがあり、その時「柿根性」について書いた。柿は、渋いものでも、干せば甘く変身し、焼けば渋もとれる。こういう一見頑固そうに見えて、実は変わりやすい性格が「柿根性」なのだという趣旨だった。この「柿根性」の対義語として昔からあるのが「梅根性」であり、梅は煮ようが、焼こうが、どんなに手を加えても頑固なまでに酸っぱい、頑固でなかなか変わらない性格のことを「梅根性」といい、日本では昔から身近にあった梅と柿を対に使ったようだ。
 私たちの周囲にいる人たちを見渡したとき、程度の差こそあれ「梅人間」と「柿人間」に大別できそうだ。昔から頑固といえば日本男子の専売特許であり、男性=梅人間、女性=柿人間が一般的だったが、近年、日本も種々の分野で女性が強さを発揮し、強い女性のイメージが浸透してきた。
 女性の立場が向上することは結構なことだが、半面、最近は日本の男性は、女性が強くなったぶん、自信を喪失し、ややもすれば主義主張に一貫性を欠く感がある。梅と柿のどちらが良いというのではなく、両者のバランスが大切なのだ。自身の発言、行動に責任と自信をもって、ぶれない態度で日々を過ごしながらも、その背景として柔軟な発想も忘れないバランスの良さこそが昔からいい伝えられてきた「梅根性」と「柿根性」の意味ではないだろうか。【河合将介】

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