10日から3泊4日の日程の修学旅行でロサンゼルスを訪れた愛媛県立松山東高校(藤田繁治校長)の2年生男女99人が13日、アナハイムで開かれた南加愛媛県人会会員や県出身者など、当地で活躍する日本人を招いた夕食会に参加し交流を深めた。生徒は、大谷喜平県人会長から激励され、同校卒業生の講話を聴き、刺激を受け海外志向を高めた。
創立137年の松山東高は、県内屈指の進学校でありながら、部活動が盛んで、今年春の選抜高校野球甲子園大会に82年ぶりに出場し勝利を挙げるなど、文武両道を伝統とする。優秀な人材を多く輩出し、夏目漱石が教壇に立ち、正岡子規が学んだことでも知られている。
同校は昨年、文部科学省から国際的に活躍できる人材育成を目的にした「スーパーグローバルハイスクール」に指定(全国で56校)されたのを機に、補助金1600万円を利用して海外研修を中国、台湾、韓国、インドネシア、フィリピンで催したり、一部の授業を英語で行ったりしている。こうした国際化の波に乗り、今回初めて修学旅行を海外で実施した。生徒は、UCLAを訪れ代表9人が受講したり、カリフォルニア・サイエンスセンターを見学、タナカ・ファームズではイチゴ狩りをするなどし、貴重な経験を積んだ。
修学旅行は、国内組(北海道、関東、立山黒部の各所)と海外組に分かれた。日本の若者は内向的とされるが「視野を広げて世界に目を向けてほしい」という学校側の期待通りに、LA希望者は定員を超えたという。引率した藤田校長は「外国を訪れるのは、若い時期ほどいい経験になる。世界のリーダーであるアメリカが経済的、文化的にどういう国なのかを実際の目で見ることができた」と説き、LAを訪れた意義を強調した。
交流会で母校後輩に向けて語ったのは、古茂田和明さん(日本語雑誌ライトハウス・国際教育事業部部長)と、宮田真さん(ヘメットバレー医療センターの内科医)の2人。体育祭や文化祭、クラブ活動に明け暮れた高校時代に思いを馳せながら、卒業後何年たっても変わることはない愛校心を力説。職務については、主に海外での経験を披露した。
古茂田さんは大学卒業後、日本で就職した。起業を目指してイタリアに渡ったのは15年がたった後だったことから「もう少し若いうちに海外に出れば…」などと、悔しさをにじませ「早いうちに外に出て、人生を楽しんで下さい」と、海外雄飛を促した。
宮田さんは日本での勤務を経て渡米後、第一線で活躍するまでの下積み時代の苦労話を紹介した上で「各分野で上を目指してトップになる目標があれば『自分が夢中になれること』と『自分の強み』を見つければいい」とアドバイス。職業の選択については「かっこいいとか、お金が儲かるからではなく、やりがいや社会貢献を考えて決めてほしい」と語りかけた。
生徒の福田凛さんと眞木就さんは、修学旅行の行き先としてLAを選んだ理由をそれぞれ「日本ではできない体験をしたかったから」「海外に行ったことがなく、興味があったから」と説明する。ともにUCLAで講義を受け「英語力の足りなさを痛感した」と口を揃え、福田さんは「英語をもっとがんばって勉強したい」と発奮。眞木さんは、日本と大きく異なる授業風景について「積極的に手を挙げて発言し印象的だった」といい、全員が参加して議論を交わす生徒の意欲を見習いたいとした。先輩2人の講話については、刺激を受けた面持ちで、福田さんは「成功するために重ねた努力が目に浮かんだ。何事も諦めないようにしようと思った」と気持ちを新たにし、眞木さんは「僕らの先輩が海外に出て成功した姿を見て感動した。先輩に負けないように頑張る気持ちが沸いてきた」と意識を高めた。
藤田校長は、交流会について「貴重な体験を聴かせてもらい、生徒はゲストの方々と積極的に話してくれてうれしい」と評価し、ロサンゼルスでの修学旅行を継続して行う意向を示した。【永田潤、写真も】