品評会は76年の長い歴史を有し、米国産と世界各国からの輸入品、ビンテージから新発売までが、銘柄を明かされず、厳正に審査される。日本酒・焼酎の人気の高まりに応えて、６年前から各部門を設け毎年、日本全国から集めた銘酒が出品されている。日本酒は純米大吟醸、大吟醸、本醸造、にごり、スパークリング酒、生酒、生もと、普通酒など２１部門、焼酎は芋、麦、コメ、黒糖、泡盛などの６部門に分けられている。金賞作品は、今秋（９月４日～２７日）、同所で開催されるロサンゼルス・カウンティーフェアでも紹介される栄誉に浴する。
品評会に４年連続で参加した日本食卸業「共同貿易」は今回、日本酒３８銘柄（金賞１５）、焼酎は１７銘柄（金賞１１）を出品した。日本から各蔵元が、海外の品評会や試飲会に参加するには負担が大きいため、共同貿易が地方の蔵元の代理を務めた。同社営業部長で日本酒ソムリエの上野俊男さんによると、ＬＡの権威のある品評会で金賞を受賞した蔵元は「励みになる」といい、中には受賞をセールスのウリにし「売上げが２倍になった」「在庫がなくなった」と喜んでいるという。
試飲会では、酒ソムリエなど専門のスタッフが対応し、それぞれの酒の産地や原料、製法、おいしく飲む適温などに加え、料理との相性などについての説明がなされた。試飲会の参加者には、質の高い数種類の酒と焼酎が試飲できると好評を博した。上野さんは「この酒は、いくらで、どこで買えるのか」などの質問を多く受けたことから、地方での関心の高さを実感し、さらなる普及に意欲を示していた。同社が催す試飲会は業者相手が多いが、一般を対象とした同イベントには教育施設支援というＣＳＲ（企業の社会貢献活動）の一環として参加。同社はまた日系社会支援のため、リトル東京サービスセンターが主催する、酒試飲と試食イベント（今月２４日夕、日米文化会館）にも協力する。
会場のポモナからほど近いクレアモントから来たアダム・ベラさんと妻のジェニファー・アンダーソンさんは、ワインを目当てに参加し「どれも、おいしいワインばかりだった」。ベラさんはグリコに勤めておりプロモーションのために、ポッキートラックを走らせ、各地のイベントを回っているという。好物の日本食をよく食べるといい「今日は焼酎について説明を受け試飲し、どんな料理にも合うことが分かった。ポッキーにも合うと思う」と、ほろ酔い気分の中で商機を見出していた。
トーレンスに住むグレース・ウォントさんは、ガーデナのデニース・ウィートンさんを誘って参加した。２人は、各所の試飲会やワイナリーを巡る大のワイン好き。ウォントさんは「品評会で受賞した、とてもおいしいワインが飲めて、５０マイルをドライブして来たかいがあった。教育機関の支援にもなるので、いいことをしたと思う」と述べた。和食を好んで食べ「日本食レストランでは必ず日本酒を飲んでいる。今夜も大吟醸を楽しむことができた」と話した。
同所の教育センター専務理事のエリン・ダウドさんによると、同教育システムは幼児から児童、十代の青少年の各授業やフェアプレックスへのフィールドトリップ、高校生の奨学制度、職業訓練など、初等から生涯教育に至るまでさまざまなプログラムを持ち、地元を支えているという。授業料は無償か低額に抑えられているため、運営は個人と企業、各種団体からの寄付に頼るほか、今回の試飲会とファンドレイジング・パーティーを開き資金を捻出している。同夜の売上げは、オークションを含んだ約12万ドルを見込み、その全額が教育プログラムに充てられる。
ダウドさんは、イベントについて「われわれの教育に理解を示して、国際的な品評会で受賞した作品を寄付してもらい、多くの参加者を喜ばせてくれてありがたい」と謝意を表した。日本酒と焼酎の出品を歓迎し「とても多くの味のいい酒を提供してもらった。日本酒の試飲会はあまり開かれていないので、われわれの支援者に貴重な機会を与えてくれてうれしい」と語った。【永田潤、写真も】
