青い空に白い波がぶつかる防波堤に、5羽のカモメが止まっていました。カモメたちは順序よく均等に並んで、まぶしそうに海を見つめています。最初の一羽は、他のカモメが飛んだら自分も飛ぼうと思っています。2番目のカモメは、子供たちに餌を与えるために飛び立たねばならない時間を気にしています。3番目のカモメは、足の痛みが限界になる前に飛び立たねばならないと計算をしています。4番目のカモメは誰にも非難されないようにうまく飛べるか心配をしています。最後の一羽は次に羽を休める場所が誰かに盗られるのではないかと心配をしながらも、何かが変わるかもしれないことをずっと待っています。それぞれが自分なりの飛び立てない理由を抱えながら動こうとせずに止まっていました。
 何時間も経った頃、一羽のカモメがとうとう飛び立つことを決意しました。そのカモメにとって、それはそれは長い思考の後に導き出された結論だったのです。さて、残っているカモメは何羽でしょうか。
 数時間後、残ったカモメの数を数えると全部で5羽ありました。いったいどういうことでしょうか。答えは簡単です。カモメは飛び立とうという決意をしましたが、実際には飛び立たなかったのです。何事もなかったように他の4羽と同じように止まっていたのです。これはアンディ・アンドルーズ著の有名なエピソードなのですが、ずいぶん脚色をしてご紹介しました。飛び立とうとしないカモメも、飛び立とうと決意したカモメも、外から見れば同じカモメにしか見えません。さまざまな理由をつけるカモメは自分自身だと考えてください。一歩を踏み出すということは、決意することではなく、行動をすることなのです。
 10月、LAの夜空にアンジェラ・アキさんの純朴な歌声が響きました。日本での活動を休止し母親の故郷であるアメリカにチャレンジすることは、自分自身を未来へと進める重要な飛び立ちであったと感じました。そして私たちに、実際に飛び立つことへの大切さを教えてくれました。【朝倉巨瑞】

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