ロサンゼルから敬老ホーム売却への反対運動のニュースが伝わってきた。日本からでは判断できないが、多くの知人や友人が関係している敬老が売却されると聞くと感慨深い。
 もともと日系引退者ホームは、創設者・和田勇さんが日本の要請で、南米の国際オリンピック委員に東京への投票を依頼する旅でサンパウロのユダヤ人専用の養老院を見たことがきっかけとなった。彼の日系コミュニティーに対する情熱は、日系人シニアに日本語で、日本の食べ物で住める養老院を作りたいと、次のような構想となった。
 「このホームは単なる老人のためのホームではない。私は多くの日系の若者にビジネスにチャレンジしてほしい。その中から成功者が出て日系社会を支えるようになってほしい。しかし、ビジネスは努力すれば成功するという簡単なものではない。なんども何度もチャレンジして年をとって老いる人もいる。老後を安心して若者にチャレンジし続けてもらうために日系引退者ホームを作るのだ。いわば老人のためではなく、チャレンジする若者たちのためにこのホームを用意するのだ」と。
 この施設創設のためには日本でも多くの財界・政界の重鎮たちが応援して多額の寄付を実現した。いわば創設の募金活動はロサンゼルス日系コミュニティーと日本との合同事業であり、その後の日米の絆を強める大きな力になった。その詳細は、「祖国へ、熱き心を」(高杉良著・講談社)に記されている。文中で「この施設は、アメリカ全体の日系人社会のシンボルになると思います。そして三世、四世へと時代を超えて受け継がれてゆくんです」と和田夫人・マサの言葉がある。多くの人々の誇りと心のよりどころ、敬老ホームを残す方法はないだろうか?
 このような施設の運営は、いかに継続的な資金の支援構造を作るかが不可欠である。日系社会を支えてきた日系の事業家たちが老齢に達し、継続的な資金援助の流れが細りつつある。あとに続く若い世代の資金支援者をどう育てるか、進出している日本企業からの資金支援も含め、今回の反対運動がそのような資金支援者を掘り起こすきっかけになればと願う。【若尾龍彦】

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