テレビの前で釘付けになった。苦しい道のりにもかかわらず連覇の夢を抱いた選手たちは皆一様に笑顔でたすきをつないでいた。
今年の箱根駅伝の覇者、青山学院大学は昨年に続き2年連続の総合優勝を果たした。走り終えた後、インタビューに答える選手たちの笑顔と言葉が印象に残った。「楽しく走ることができました」
1区間およそ20キロ。疲労はピークに達していたはず。しかし選手のほとんどが笑顔で「楽しかった」と振り返った。その明るさの秘密はチームを優勝へと導いた原晋監督にあったようだ。
監督は選手にネガティブな感情を持たせないようにしていたという。前向きな気持ちが最高のチームを築き上げ、個人の成長にもつながると信じていた。辛い時ほど、挑戦の時こそ笑顔でいることが大事だと説き、選手たちはその教えに従った。そして「箱根の神」は彼らに微笑んだ。
何が起こるか分からない箱根駅伝では毎年数々のドラマが生まれる。今年も途中、もうろうとする意識の中、時折苦しそうに胸を押さえ、地面に手がついても必死になって這い上がりゴールを目指す選手がいた。中継所では先頭走者が通過してから20分が経過すると繰り上げスタートが行われる。残念ながら間に合わなかった選手の前には誰もいない中継所の様子が飛び込んでくる。倒れ込むようにゴールし、たすきをつなげられなかった無念と悔しさで涙しながら仲間に謝る選手の姿が目に焼き付いて離れない。
すべての選手に共通するのは「伝統のたすきをつなぎたい」という思い。その情熱が彼らを突き動かしている。学生生活の中で夢中になれることを見つけ、純粋にひとつのことに一生懸命に打ち込む選手たちの姿は美しかった。若き日の情熱はたとえ辛く苦しい思い出でもきっと将来の糧となり、大きな力となって何倍にも返ってくるはずだ。
選手たちの健闘を見ながら学生の頃の筆者は情熱をもって何かに打ち込んだ経験があったか考えてみた。しかし思い浮かばず反省猿のように反省ばかり。新年の抱負は今年の覇者のモットー「明るく笑顔で」に従ってみようと前向きに考えてみた。【吉田純子】