シンゴジラが大田区に出現しているとの噂を聞いて、蒲田にある銭湯に行ってきました。のれんには、ゴジラ湯と書かれており、脱衣所にはゴジラの足跡がありました。壁の銭湯絵にはゴジラと富士山が描かれ、逃げ惑う人々も描かれており、まさに銭湯で戦闘。その下でゆっくりと黒湯(本物の温泉なのです)に浸かりながら、シンゴジラが蒲田の呑川に現れた場面を思い出すことができました。
 映画では、シンゴジラを退治するために日米の政府があらゆる手段で戦っていく姿が描かれますが、ここで登場するのが日系米国人なのです。祖母が広島で被爆したという石原さとみ演じる女性が、米国と日本政府との間で調整役として大活躍をするのです。例によって英単語と日本語が混ざった喋り方には違和感を覚える方もいるようですが、大切なのは、危機や転換点では日系人の方々が活躍するということです。
 たとえば戦後日本の食糧難を救ったのは、日系人の浅野七之助氏の呼びかけで始まったララ物資でした。また日系人のフレッド和田氏がいなければ、1964年の東京への五輪の誘致もできませんでしたし、敬老シニア施設の創設もかなわなかったでしょう。その他、多くの日系人の方々が日本をサポートし、信頼ある国にする役割を果たしてきました。日本の心を持った米国人や米国で学んだ日本人が、両国の転換点では大きな役割を果たしてきたことに気付くことが重要なのです。
 放射線物質を撒き散らし、街を破壊するゴジラは悪の象徴のような存在ではあるのですが、なぜか憎めない愛されるキャラクターです。それは、私たちの心の中にある善と悪が戦う姿だからかもしれません。私たちが欲する発展や合理化の裏には、環境や自然破壊、合理化によって切り離される負が存在します。破壊や異端の象徴であるゴジラは、私たちの心の中にある正と負、善と悪などの相反する気持ちの象徴なのではないかと感じました。
 期間限定のため、現在ゴジラの銭湯絵はありませんが、シンゴジラが最初に出現した呑川沿いには桜の木が植えてあり、春には美しい花びらを川に散らせます。【朝倉巨瑞】

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