暇つぶしに書店へ寄ったら、文庫本の表紙いっぱいの佐藤愛子の満面の笑顔が目飛び込んできた。93歳でこのアップ! 肌はつやがあり、以前よりも若々しくさえ見える。ついその笑顔に引かれて買ってしまったが、本の中身は、期待外れだった。よく見たら、これまでの講演などの「語りおろし」とあった。作家の「書く」と「語る」は全然別物のようだ。
はて、近年はどんなものを書いているのか興味がわいて、「かくて老兵は消えてゆく」というエッセー集をあらためて求めた。
愛子節は健在であった。読んでいてスカッとする。東日本大震災や陛下のことなどにも触れて、ニュースの奥を読む独特の切り口がなんとも共感を覚える。
86歳で亡くなったが、高峰秀子も、晩年まで美しかった。エッセーは秀逸であった。どちらも過去には多額の借金や親との確執など抱え、世間でいう苦労人である。それを微塵も感じさせず、はねのけてきた逞しさも共通している。
バレンタインに、水森亜土コーディネイトのチョコレートが日本から届いた。亜土ちゃん、まだ活躍してるんだ。しかも、若い子にも人気があるのか、この亜土ちゃんのチョコはすぐに完売したらしい。近年彼女が描く女の子はどちらかというとブリジット・バルドー(古い?)ばりの色気がある。こちらは少し若くて御年77歳。今も、違和感なしのキュートさだ。
美しく年を取るのは、なかなかむつかしい。そうありたいと心掛けていても、ふとしたことで健康を損なうと計算通りにいかなくなったりする。女性の平均寿命が86・99歳と聞くと、あと何年元気でいられるか? とつい、指折り考えてしまう。
そういえば最近、肝が冷えたことがあった。日系のスーパーのレジでトマト片手に並んでいて、財布がないことに気が付いた。エッ、さっきまで…。頭の中はめまぐるしく回転する。トマトの売り場だ! 急いで取って返すと、棚の枠にちょこんとわが財布が乗っかっていた。やれやれ。
前回はどうしたことか好きなバイデン副大統領の名前を間違ってしまった。これも年のせいか? 失礼しました。【中島千絵】