人は誰でも一度落ち込んでしまうと、失敗を恐れ、不安になり、次の行動になかなか移れない時がある。立ち直るコツは、いかにして気持ちを切り替えられるかだ。
 ふと中学当時のある出来事を思い出した。技術科目の二者選択のテストがあった。はい、いいえのどちらかを選ぶ。ユニークな先生で、もし分からず、無回答の場合はマイナス点を与える条件が付いた。それゆえに全問をとにかく答えなければならない真剣勝負だった。
 結果発表。難問ばかりで平均点は50点ぐらいだった。中には満点もいた。ところが0点も一人いた。いつも明るいS君だ。当初はさすがに落胆していた。すると先生はS君を感心したように「完璧だ」と褒めた。S君は満点を取るのが難しいぐらいの離れ業をやり遂げたのだ。つまり、二者択一で全て間違った答えを見事に当てたのである。当てずっぽうで選んでも、確率からして50%は正解になるはずだ。まぐれかもしれないが、紛れもなく偉業を成し遂げた。S君は一時クラスの人気者になった。
 先生は、実は結果よりこのテスト方式だからこそ、生徒たちは必死に勉強した、という点に重点を置いた。そういえば、その学期は技術の教科書を何度も読み直し、内容を理解したのは確かだった。
 また20年前、自分は1週間に3枚の違反チケットを立て続けに受け取った時がある。スピード違反、信号無視、一時停止無視だ。それ以前、以降は違反ゼロ。まさに魔の一週間でかなり落ち込んだ。確か天中殺の占いも見てもらった。運転が怖くなった。当時、相談した友達は、宝くじを買ったらいいぞ! と提案。そんな確率で不運が起きたのなら、神様はカウンターバランスしてきっと幸運を授けるに違いないと。ツイてる! と。
 半信半疑だが、試しに10ドルほどの宝くじを買った。結果発表までの数日間はなぜかワクワクした。どれも当たらなかった。そんな虫のいい話はないが、気が楽になったのは確かだ。
 マイナスをプラス思考に変えるヒントは、発想の転換だ。一度止まって視野を広げて別角度から見直す。落ち込んだ時、今でも時折応用している。【長土居政史】

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