今年も大きな満月が美しかった仲の秋。気がつけば10月も後半になろうとしている。街や住宅街はハロウィーンの装飾が本格的になってきた。交差点のコーナーに設けられたテントの下には大小のかぼちゃがぎっしり並び、買い主が現れるのを待っているかのようだ。信号待ちをしているちょっとした間に見るこんな光景で、季節の移ろいを感じる。いかにもカリフォルニアらしい。
 日が沈むのが早くなったとか、朝晩少しだけ冷え込むとか、そういった「なんとなく」の変化が、南加の秋の訪れだ。日本のように、中高生の制服の衣替えや、運動会、芋掘り遠足のローカルニュースを見聞きすることはあまりない。けれど、当然ながら、当地にも秋は来る。
 「ざくろがたくさんなったので、取りに来ませんか」知人からメッセージをもらった。彼女の庭では、さまざまな果物が実をつける。初夏からこの時期にかけては、枇杷(びわ)、無花果(いちじく)、葡萄(ぶどう)、桃、そして柘榴(ざくろ)。これだけの果物が順々に実をつけるのを日々眺めていれば、季節の変化、うっすらとした秋の始まりに、自ずと気づくことになるのだろう。真っ赤なざくろがたわわになった木には、リスが頻繁にやって来るという。熟れて甘くなったおいしいところからかじっていくのだそう。リスにとってもこの庭は、めぐって来た秋を謳歌するのにぴったりな場所なのだ。
 日本からは秋祭りのニュースが伝わって来た。東京の商店街からは女性がかつぐ神輿(みこし)、383年の歴史を誇る長崎くんち、愛媛松山秋祭りの喧嘩神輿など、力強さや活気は相当なものだ。一方で、SNSに投稿された生まれ故郷の神社の祭りは、規模も小さく派手さはない。けれども、幼いころ慣れ親しんだ笛の音や神楽の舞、親戚が作ったご馳走の匂いまでもが懐かしく、思わず写真に見入ってしまう。
 第48回衆議院議員選挙の開票は22日。当選祈願に神社を参拝する候補者はいるだろうか。神様が一年で一番忙しい時期だ。お参りしても不在かもしれない。神無月の選挙、大いに注目したい。【麻生美重】

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