(シブミ提供)
外観は禅建築風にデザインされた窓とドアのみの質素なたたずまい。看板もない。「隠れ家的」という慣用句が似合うレストランだ。店のほぼ中心に置かれた樹齢400年という糸スギのカウンターは、平日の夜8時台ながら、会社帰りのビジネスマンやカップルでいっぱいだった。
ロサンゼルスの食通ジョナサン・ゴールドの「101ベスト・レストラン・リスト」で昨年2位、元LAウィークリーの批評家ビーシャ・ロデルから五つ星中4をもらうなど、シュロッサーさんは若手注目株のシェフだ。
こう答えながら、シュロッサーさんは大きな米マツ製のまな板越しに自家製のカラスミを勧めた。
フレンチシェフとしてキャリアをスタートさせた後、日本食の世界へ。2002年、ビバリーヒルズの銀座寿司幸(当時)で初のアメリカ人板前となり、世界的に有名な和食シェフの高山雅氏(まさよし)さんより寿司を基礎から学んだ。シブミを開く前は東京の米大使館のシェフとして日本に4年ほど滞在した。その間、江戸前寿司以前の和食を追求。京都の名店で懐石や割烹を学んだ。
凱旋帰国を遂げたシュロッサーさんは、割烹をロサンゼルスで紹介するべく自身のレストランを開店。たちまち当地の和食の未来を牽引する人物として注目を浴びた。割烹を懐石料理と居酒屋の中間と定義し、日本人が慣れ親しんだ味や、寿司以外のおいしさを当地の和食ファンに提供する。この夢がかなった形だ。
お任せは90ドルから。珍味(18ドル)や自家製豆腐(18ドル)、麹漬けの豚グリル(26ドル)、桜の木でスモークしたサーモン(22ドル)、カリフォルニアビーフ(30ドル)は本わさびでいただく。デザートの「(R)ICECREAM」は、米麹を混ぜ込んで作られたもの。濃厚なのにさっぱりとした後味だ。
(シブミ提供)
「豊後牛も霜降りで柔らかく、神戸牛や宮崎牛にも引けを取らないと思う。大分へは3月に行く予定。おいしい物をたくさん見つけてこようと思う」
和食を極めようとする姿勢が、店の随所に感じられる。スタッフのサービスも申し分ない。
「この店に上下関係はないよ」スタッフの一人が言う。
役割を決めていない分、それぞれの知識も豊富だ。シュロッサーさんの食へのこだわりが、スタッフ全員に浸透しているようだ。
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