トロピカルなカクテルドリンクをオーダーすると、ペーパークラフトのカラフルなミニチュア傘が差し出されてくる。この感動ともいえる素敵な工夫の発想は一体誰がどのようなきっかけで始めたのか調べて見た。
 起源は諸説あるが、大恐慌直後の1934年ハリウッドに開業したテキサス生まれのドン・ザ・ビーチカマーというバーのオーナーであるドンによるアイデアが有力だ。若い頃、カリブ海や南太平洋など世界中を旅し、ポリネシアのトロピカルアイランド風をテーマにしたいわゆるティキバーを考案し、カクテルに傘を添えた。都会では味わえない南国の楽園を体験できるとしてセレブたちに賛同され、チャールズ・チャップリンも常連客だったそうだ。
 ドンの友好的なライバルであるキューバとハワイに住んでいたビクターというトレイダービックスの創立者が始めた説もある。ラムベースのマイタイをオリジナルで作り出したとも主張する(ドンの発明説も)。
 バーは当時は葉巻を吸う酒飲みの男たちによる集いの場だった。女性客にも入りやすい雰囲気作りと、女性にも飲みやすいようにカクテルドリンクに傘を添えた。つまりプロモーションの一環としてのアイデアだったとのことだ。つまようじとして実用的に使ったり、帽子や髪に飾ったりなどで、今でもその伝統は確かに続いている。
 またティキ・ドリンク歴史家によると、1959年にワイキキのヒルトンホテルのブルーハワイを考案したバーテンダーが、飾り物として傘を添えたのが始まりとの説もある。
 夏の暑いビーチで、太陽の直射日光が当たり氷が溶けるのを防ぐための傘だという説もあるが、そもそも飲み物に傘を添える習慣がポリネシアに存在したという証拠は見つからなかったそうだ。
 それ以前に中華料理店で飲み物に傘を差す習慣はすでにあったとの意見も。その種の紙質の傘は中国の大昔、西暦22年新潮の皇帝王莽の時代にすでに存在していたという。
 ちなみに84種類のカクテルを考案したドンは離婚した妻に店を明け渡し、その後ハワイで別な店を開いた。常に夢を追い続けるロマンさえ感じる。【長土居政史】

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