16日行われたアメリカンフットボールの大学日本一を争う「甲子園ボウル」で関西学院大が早大を下し、2年ぶりに優勝。関学2年生のQB奥野耕世(20)が最優秀選手賞と年間最優秀選手賞のミルズ杯をダブル受賞した。
 アメフトに詳しくなくても名前に聞き覚えがあった。そう、5月6日に日大との定期戦で反則タックルを受け負傷した奥野君である。
 ニュースのたび、繰り返されたあの場面。パスをし終えた後の緊張のとれた無防備なところへあの強烈なタックルである。タブーなのか、けがの程度はあまり詳しくは報道されなかったが、父親が市会議員の職を投げ打っても原因究明に取りかかるとまで言うのは、余程の大けがに違いないと私は思っていた。だが、3週間後には練習試合に参加して走る奥野君が見られてホッとしたものだった。
 そもそも、あの反則は、SNSで拡散して、皆の知るところとなった。そうでなければ、試合中のけがで終わっていたのだというから、ネットの威力は恐ろしくもある。
 関学と日大のあいだで正式な謝罪、事件の経緯の説明要求などのやりとりがあったが、誠意ある回答がなく、監督の反則を容認するような発言もあり、二転三転していたようだ。
 そこで5月22日、問題のタックルを行った宮川君の謝罪会見となる。20歳の一般人の学生が実名と顔を公表するのは異例のことだという。会見はまず被害を受けた選手とその家族、関係者に謝罪し、その後、経緯を説明。彼の口からはパワハラともとれる言葉がいろいろ語られた。練習を外され、「1プレー目で(相手)のQBをつぶせ」と言われ、追いつめられたと…。これに対し、監督、コーチともに、つぶせというのは「それくらいの気持ちでやれと言うことだ」などと指導者とも思えない言い逃れをしている。
 被害者の父親は宮川君復帰の署名を集め、示談が成立したという。内田前監督は傷害罪で訴えられ、辞任している。
 いずれにしても、被害者と加害者ともに20歳そこそこの青年にとって、この事件の与えた試練は大きすぎたのではないだろうか。
 最近のスポーツ界でのパワハラ問題続出は師弟の間に大切な何かが欠けている気がしてならない。【中島千絵】

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