探し物をしていたら、古い新聞が出てきた。それは、2009年3月26日付朝日新聞国際版「リトル東京 人種のるつぼ」という記事。小見出しの「若い日系人 進む街離れ」「急増する韓国系」「『ルーツ守れ』集いの場づくり」のとおり内容が一目瞭然。
 小東京タワーズやミヤコガーデンズの韓国系住民の比率が、その10年前と比較して3倍になっている。日系人親子に集ってもらい「ここがあなたのルーツだよ」と伝えられる場所にしたいと武道館建設に期待をかけるLTSCのビル・ワタナベ氏の談話があった。すでに5年前に完成予定の武道館は今なお建設途中。10年前の記事はその10年後に読んでも違和感がなかった。
 日常的にリトル東京と関わっている者として、歴史や文化に興味を持って訪れる人は日本人や日系人ではなく他の人種が多いように見受けられる。以前あった○○日本食レストランは、日本人オーナーの××店は? 東洋宮武写真館があった場所は? などと聞きに来るのも同様。若い韓国人たちが「(リトル東京のことを)ここはリトルソウルなのに何で日本人がいるの?」などと言っているのを聞くと、腹が立つより嘆かわしい。
 日本人が散在しているのはいいとして、何か問題が発生すると、日本語が通じるところに助けを求める。ところが、ロサンゼルス市警の管轄範囲があってリトル東京交番で対応できないことがままある。病気や事故に遭っても同じことがいえる。自分が困った時だけ、日本人・日系人を頼りにするが、その頼りにする日系人のルーツや歴史に思考がいっていないと思うことが度々ある。
 日本の情報を求めてリトル東京にやってくる人たちに観光局はどこか? と聞かれて、ここではないと返事すると??が返ってくる。観光局もジャパン・ハウスもリトル東京にはない。日本語放送に政府が支援するように総領事館に言ってほしい、と交番に訴えられることもあるが、それは言う場所を間違えているが苛立ちは理解できる。無料で見られた日本語放送が縮小されていって、韓国語・中国語の番組は複数チャンネルで見られる。
 10年後のリトル東京は、この記事をどう変えられているか。【大石克子】

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