私にとって心優しい笑顔の絶えない同級生は、会社では全く違う顔を見せているようだ。怖くて怯える後輩たちもいて何度も懲罰委員会に呼び出されているという。
 いわゆる「ブラック上司」だが本人に自覚はない。パワハラという指摘には不服そうに自らを弁護する。「必要な指導」「クライアントのため」「自分もそう指導されてきた」と。
 一方、別の友人は上司のパワハラに長年苦しめられてきた。「自殺か辞めるかどちらか選べ」「どうだ手首でも切りたくなったか」。上司がかける言葉とは到底言いがたい。
 さらには、納得のいかない「悪い評価」を何度もつけられた結果、望んでいたキャリアに進むことができなくなったという。「もうブラックリストに載っているのでは」とあきらめ顔だ。
 厳しい上下関係が介在する大人社会のいじめは陰湿だ。どうして自分よりも若かったり、地位が低かったりする人に対して「上から目線で偉そうな態度」を取ってしまうのだろうか。
 プライドや地位、権力を守るために「若い芽」を摘む行為。それはまさに上司自身の能力のなさの裏返しであり、人間としての器の小ささを表している。しかし、そういった類の人間は組織の上の人間には別の顔を見せ、うまく取り入って今の地位を堅持しているのだろう。
 被害者の多くは泣き寝入りし我慢を強いられることになる。毎日顔を合わせるから関係を壊したくない、クビにされては困る。これではパワハラする人間はしたい放題である。
 評価制度も問題だ。日本の企業は概して減点主義。社員のミスやネガティブな部分にばかり目を奪われがちだ。人にはいい部分がたくさんあるにも関わらず、重箱の隅をつつくかのように悪い部分ばかりを取り上げる。
 管理職になったある元同僚には釘を刺した。部下のいいところを多く評価し、伸びしろを見つけて期待する。そしてそのことをちゃんと伝える。他人を評価する上で当たり前のことだが、感情的になって見失ってしまうこともあるので要注意だ。
 どうしたら上下の縦の関係から、互いにリスペクトして励まし合う横の関係に変えることができるのだろう。そうなれば誰にとっても働きやすく、成長しやすく、生産的でクリエイティブな職場になると思うのだが。【中西奈緒】

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