最近、変なトマトに開眼した。黒いトマト、茶色や緑のトマト、暗緑色と暗褐色が入り混じった色彩でデコボコな形のトマト。これらはエアルームトマト(Heirloom)という名称で、しばらく前から世間で流行中だった模様である。土曜のダウニーのファーマーズマーケットで、他の買い物客と「見た目が悪ければ悪いほどおいしい気がする」と意見があって嬉しかった。トマト界の「シュレック」は、おしなべて酸味が薄く、まろやかで濃厚な味である。
見た目は悪いが…、という食べ物は他にもあり、ドラゴンフルーツもその一つ。創作生け花の花瓶が似合いそうな奇妙な外観、二つに割っても赤紫色の果肉に黒いブツブツがグロテスクだが、一度スプーンで果肉をすくって食べたら、世界は180度、大転換した。
この歳になってもまだ新しい味を発見して楽しめるのは嬉しいかぎり。世界旅行に行かずともLAではいろいろなエスニックの味が楽しめるのも面白い。必要なのは好奇心のみ。
前出のダウニー。小東京からは南東に、トーレンスからは北東に車で20~30分。人口10万人ほどの町で、ヒスパニック・ラテン系の住民が過半数を超える。有名なキューバ系ベーカリーの裏手のわずか1ブロックに、土曜の午前に小さな市が立つのだが、農産品もさることながらラテン色のフードベンダーが私には珍しい。
手前から、揚げた魚のフィッシュタコス、隣にププサ(メキシコ版おやき)、ソーセージにベーコンを巻きつけたメキシカンホットドッグ(これが、わかっちゃいるけど抵抗できないのだ)。その隣がタマレスで、その隣がエンパナーダ。毎週1店ずつで食べて、一巡したら最初の店で、今度はシュリンプタコスが待っている。時々は、キュウリのアイスキャンディーの店にも寄って、と。
土曜日の朝のジム帰りにランチに寄るのが楽しみで、ジムのトレーナーからは「それでは痩せない」と大笑いされているが、いいのだ。いくつ歳(と体重?)を重ねても、食の冒険は続くのだ。
小東京でもたまに「八百屋さん」がテントを出している。いつか、ミョウガやシソなど和の食材、オニギリや焼き鳥店も並ぶ小東京ファーマーズマーケットなどが出来たら楽しいだろうな、と勝手に空想している。【長井智子】