国勢調査によりLGBTQの実像把握が期待される
 米国に住んでいるといろいろな場面で自由なライフスタイルが認められていると感心することがある。近年、同性カップルや同性婚も珍しくない世の中だが、これら一般にLGBTQと呼ばれる人は、2020年の国勢調査ではどのように答えたら良いか。用意された選択肢の中にLGBTQの自分を表す回答は見つかるだろうか。全米LGBTQタスクフォースでポリシーディレクターを務めるメーガン・モーリーさんがアドバイスする。

 質問 2020年の国勢調査にはLGBTQに関する調査は含まれていますか?
 回答 この国勢調査で史上初めて同居する同性カップルが情報を記入する欄が新設されました。「世帯主との関係」について、「同性の夫/妻/配偶者」と「同性の未婚カップル」という回答ができるようなりました。これにより、同性のカップルは今までに比べて簡単に、かつ、より正確に回答することができます。
 しかし、同居していない同性カップルやパートナーのいないLGBTQの人々、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々、バイセクシュアルで普通の結婚をしているようなケースは対象の選択肢がありません。
 質問 国勢調査でLGBTQのコミュニティーの、どのような実態に迫れますか?
 回答 収集する情報が同性カップルに限られているため、LGBTQコミュニティーの全体像を把握することはできないでしょう。過去10年の調査では、同性婚家庭の人種や民族の多様性、地理的分布、州や地域ごとの人数、子供のいる家庭の割合が分かりましたが、同性婚の人々の状況が広義のLGBTQに当てはまるかというと、そうでもありません。例えば、同性婚と異性婚では失業率に差がありませんが、LGBTQコミュニティー全体と異性婚を比べると、LGBTQの失業率は高くなっています。さらに詳細を見てみると、失業保険の受給率は性同一性一致の人々が4・3%なのに対し性同一性不一致(トランスジェンダー)は14・3%で、顕著な差があります。また、女性の失業保険受給率を比べた調査(Center for American Progress)を見ると、4・3%対7・2%で、LGBTQの女性が多いことが分かります。つまり、国勢調査で得られるLGBTQのデータは、コミュニティーの一部の限られたデータでしかありません。
 質問 同性カップルの情報を国勢調査が集め始めたのはいつですか?
 回答 1990年の国勢調査で「世帯主との関係」の回答に「未婚のカップル」という選択肢が加わりました。当時のLGBTQのコミュニティーは、同性カップルに向けて「未婚のカップル」として回答しようというキャンペーンを行ないました。この提唱の目的は、「社会におけるLGBTQの認知度を高め、ゲイやレスビアンの人々への、より敏感な対応を国勢調査に求める」ことでした。
 ところが国勢調査側は、同性カップルからの回答データを公開するどころか、カップルの一方の性別が誤って回答されていると決めつけて性別を修正したため、データは改ざんされてしまいました。
 2000年の国勢調査でも同じ回答の選択肢が用意されました。この年は調査局もLGBTQコミュニティーからの働きかけで、同性カップルの性別を修正しないことに同意しましたが、調査局は今度は「結婚している」同性カップルを「未婚の」同性カップルに修正し、この行為を「間違いを直そうと思ったため」、と正当化しました。
 質問 今回2020年の調査では、トランスジェンダーとノンバイナリーの人々は性別に関する問いにどのように回答したら良いですか?
 回答 2020年調査の性別の回答は「男性」か「女性」しか選べません。トランスジェンダーの一部、そしてノンバイナリーのほとんどの人々にとって、これらは自分の性別を表現するには正確ではありません。また、どちらかに記入したとしても、トランスジェンダーであるかどうかは回答からは分かりません。残念ながら、これらの人々は、自分たちの性別を既存の枠に当てはめようとする質問を常に受けています。LGBTQのコミュニティーはトランスジェンダーとノンバイナリーのデータ収集がより正しく行われるように活動を続ける必要があります。それまでは、トランスジェンダーとノンバイナリーの人々は情報がどのように使われるかをよく理解し、現状の中で最良と思われる回答をする必要があります。ぜひ以下の情報を参考にしてください。
 国勢調査は―
 ▽性別、人種、民族に関する質問を含む全ての質問に、自分自身のアイデンティティーに基づいて、自分を表すのに最も合っていると感じる内容を回答することを推奨しています。
 ▽取得したデータを他のいかなるデータとも比較しません。トランスジェンダーとノンバイナリーの人の中には現在の性別に一致した運転免許証や出生証明書などの証明を持っている人もいれば、持っていない人もいるでしょうが、その有無に関わらず、国勢調査は回答者の回答を尊重します。

LGBTQの回答についてアドバイスをくれたモーリーさん
 ▽性別欄の回答を、無回答、あるいは男性・女性の両回答とすることはできません。そのような回答に対しては、国勢調査局が「正しい回答」と思われる回答を書き込みます。また、回答が不正確または不完全とみとめられた場合は、調査員が確認を求めて回答者に連絡をする場合があります。回答者に連絡がつかない場合は「帰属計算」に基づいて統計的に一番あり得る回答を記入します。
 これらのアドバイスをくれたモーリーさんはジョージタウン大学の法学部で学位を取得、マサチューセッツ大学の修士過程と大学院を卒業。全米LGBTQタスクフォースのポリシーディレクターとして現在、国勢調査のキャンペーンに携わっている。
 国勢調査局のウェブサイト―
 www.census.gov/
 全米LGBTQタスクフォースのウェブサイト―
 www.thetaskforce.org

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *