小東京の開業医時代の入江氏(左端)。引退後も執筆活動を続けている
 年寄りをいたぶるコロナ嫌なヤツ
 3月の羅新川柳課題は「と」で始まる句でしたので、こんなのを作りました。実感です。

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 コロナウイルスが猛威を振るっています。イタリアの状況などは悲惨です。また、発生地の中国に近い日本より、ここアメリカで爆発感染が起こっています(4月23日現在で米国の感染者総数86万5585人、死者4万8816人、死亡率5・6%)。そんな中で、後期高齢者はかかりやすく、重篤化しやすいことも知れ渡っています。恐ろしいことです。
 しかし、負けてはいられません。かからぬための予防が大切です。まず、人類共通の敵、新型コロナウイルスの基礎知識から入りたいと思います(冗長とならぬよう、箇条書きを中心に進めます)。
 ①ウイルスとは
最小単位の微生物で、地球上すべての生命の起源はウイルスと考えられています。
 ②コロナウイルスとは
 一般にコロナウイルスと呼ばれるものには、実は7種類あって、その一つが昨年中国武漢市で発生したと伝えられる新型コロナウイルスCOVID—19(またはSARS—CoV2)です。7種のうち4種は一般の風邪が原因で、多くは軽症。他の2種は、2002年「重症急性呼吸器症候群(SARS)と2012年「中東呼吸器症候群(MERS)が原因です。
 ③感染経路
 新型コロナウイルスがそもそも、どこから人間へ伝播したかは確定していないようですが、その遺伝子構成がコウモリの持っているウイルスのそれに酷似しているため、コウモリ説が最も強く信じられています。
 人から人への感染経路は、二つ。⑴飛沫感染—感染者のくしゃみ、セキ、唾に混じってウイルスが飛び出し、それを他者が吸い込む、 ⑵接触感染—感染者の手から他者へ。感染者からの飛沫が付着した物(ドアノブ、手すり、電気器具のスイッチなど)に他者が触れ、その手指を口や鼻腔に入れる。
 ④潜伏期
 個人差が大きく、現在のところ1日から14日とバラつきあり。平均約5日間(WHOの見解)。従って、感染の疑われた人は、無症状でも14日間の安静と観察が必要。
 ⑤感染しやすい人
 65歳以上の高齢者、糖尿病のある人、心臓・肺・腎臓に慢性疾患のある人(特に腎透析者・慢性心不全患者・肺繊維症患者など)、妊婦、抗がん剤や免疫抑制剤(抗リウマチ薬など)を使用中の人など。
 ⑥症状
 ⑴カ氏100度以上(日本ではセ氏37・5度以上と規定)の発熱
 ⑵強い倦怠感の持続
 ⑶セキを伴う呼吸困難(息苦しさ)
 これらが三大兆候。しかし三つが出揃わなくても、熱や倦怠感が2日以上継続すれば警戒心を高めるべき。
 ⑦診断
 確定診断は、鼻汁、痰、またはノドや口腔内の分泌物を用いてのPCR検査(Polymerase Chain Reaction Test)によります。これは、ウイルスの細胞内活性を見るテスト。感染した結果として抵抗性を獲得したか否かは、血液中に新型コロナウイルスへの抗体が既に存在しているかを調べて判定します。
 ⑧予防法
 いよいよ予防についてです。基本的には、一般のカゼ予防(フルー対策)と少しも変わりません。肝心なのは、それをいかにシツコク徹底的に行なうか、という点に尽きます。
 ⑴手洗いと手指の消毒—外出先でのできるだけ頻繁な手洗いと帰宅後の石けんによる丁寧な手洗い。手指消毒には、市販の消毒用70%アルコールが有効。手指を口や鼻腔に入れない注意も必要。
 ⑵外出はなるべく避け、やむをえず外出する際はマスクを着用。できれば、鼻・口の周辺を密閉する形式のものを使用。自作の布製マスクを使用する場合、複数作っておき、使用して帰宅した後すぐに煮沸消毒を(コロナウイルスはセ氏70度以上で死滅)。
 ⑶外出しても人混みをなるべく回避。家庭内でも、互いの距離をなるべく保つこと(こちらでは6フィート以上の間隔、日本では2メートル以上の間隔が推奨されている)。望ましい距離を保てない場合(例・食事中)、その時間をできるだけ短縮。
 ⑷日本では、「三つの密」を避けることが提唱されています。密閉空間(密室)・密集(多人数の集合)・密接(握手、抱擁、キスなど)の三つです。この提唱には、集団感染予防の意図が込められています。
 ⑸ゴム手袋は、一般には推奨されていません。しかし、マーケットなどの買い物先で商品にコロナウイルスが付着している可能性は常にあります。医療用ゴム手袋はウイルスの進入を遮断します。食器洗い用のゴム手も可。帰宅後は捨てるか、石けんで洗浄。
 ⑨治療
 新型コロナウイルスに特定の治療薬はまだ、開発されていません。ワクチンもまだです(4月24日現在)。毎年流行するインフルエンザに対してと同じく、熱やセキへの対症療法、安静、うがい、喀痰(かくたん・痰を出すこと)、水分の補給、ビタミンCの摂取などが中心となります。
 入院者には、タミフル(Tamiflu、物質名Oseltamivir)をはじめ、他のウイルス疾患に有効とされる薬物が種々試されます。細菌による二次感染予防として抗生剤の静脈注射も行なわれます。肺炎による呼吸困難には、ネブライザーなどの呼吸療法が実施され、重篤となればICU(集中治療室)でレスピレーター(呼吸器)による人工呼吸が施行されます。
 アビガンという薬品が、日本の安倍首相からアメリカのトランプ大統領へ推薦されて話題になりました。この薬(Avigan、物質名Favipiravir。富士フイルム富山化学の製品)は、ウイルスが人の細胞の中で増殖するのに必要な酵素RNAポリメラーゼ(Polymerase)の活性を阻害する物質です。4月2日の共同通信によれば、新型コロナウイルスに有効かは、日本でも臨床試験中とのことです。
 ⑩では、具合が悪くなったら?
 熱・けんたい・セキなどで具合が悪くなった場合、間を置かずに行動するべきです。
 ⑴掛かり付けの医師に相談し、必要なら感染症専門医へ即刻回してもらう
 ⑵近くの緊急治療室(Urgent Care)に問い合わせて、PCR検査の機能を備えているなら行く
 ⑶大病院のER(救急室)へ駆け付ける、などの対策が考えられます。三大兆候に加えて胸痛・意識混濁・口唇や顔面の青や紫への変色(チアノーゼ)が生じるなら、迷わずERへ(この際「人へ移さず、もらわず」のためマスク・手袋・帽子などの装備が必要。同伴の家族や友人も)。
 ここに述べたことは、対策の骨組みだけです。一つ加えるなら、誰でもそうですが特に高齢者は(私を含め!)普段からの健康増進が大事です。栄養、十分な睡眠、そして適度な運動が必要です。これらのバランスが崩れると、免疫抵抗力が低下し、発病しやすく重篤化しやすくなります。
 頑張りましょう。

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