大林宣彦監督の遺作となった「海辺の映画館」では3人の若い男性が銀幕の世界にタイムリープをする©2020“Labyrinth of Cinema” Film Partners/PSC
 「Japan Film Festival Los Angeles 2020」(JFFLA)が10月1日(木)から10月4日(日)まで開催される。作品はオンライン上映され米国全土から視聴できるが、米国外では視聴できない。監督、出演者の舞台あいさつや、トークイベント、アワードセレモニーなどの無料イベントは全世界から視聴できる。

 同祭は今年で15回目だが、今年は新型コロナウイルスの影響でオンラインで開催されることにより、これまで来場できなかった人でも米国在住者なら誰でも見ることができる。視聴は開催期間中の96時間有効で、その間であれば都合の良い時間で再生や停止をして視聴することができる。

台湾と日本の交流を描いたドラマ「恋恋豆花」 ©2019 Love Douhua Partners
 注目の作品は、これまでJFFLAに幾度もゲスト出演し、今年亡くなった大林宣彦監督の遺作である「海辺の映画館 キネマの宝箱」。また同監督の「野のなななのか」「ふたり」をメモリアル上映する。注目の新鋭監督で、俳優でもある斎藤工監督の「コンプライアンス」や、台湾と日本の交流を描いたドラマ「恋恋豆花」、太平洋戦争で唯一の地上戦となった沖縄戦のドキュメンタリー「ドキュメンタリー沖縄」、介護の現場を描くドラマ「みとりし」が招待作品として参加する。その他、公募4点と短編12点が披露され、今年も優秀な作品がそろった。
 大林監督のメモリアルトークでは大林作品に関わった監督や制作関係者が参加する。「コンプライアンス」の斎藤監督のトークや、「恋恋豆花」の主題歌を歌う洸美—hiromi—が生出演で歌う予定で、生配信を無料で視聴できる。
 上映全作品は英語字幕付き、または英語の作品。視聴は、ビデオ・オン・デマンド(VOD)方式をとる。チケットは長編が1作品6ドル、ログイン後48時間有効。中編は4作品、短編は8作品で6ドル。オールアクセスチケット(全ての映画が96時間視聴できる4日券)は50ドル。
 詳細は、ウェブサイトー
 www.jffla.org
 ▽舞台あいさつなどのイベントの日時は次の通り。
 1日午後7時 短編映画の舞台あいさつ
 2日午後6時 中編映画の舞台あいさつ
 3日午後5時 「みとりし」舞台あいさつ
 3日午後5時 「ドキュメンタリー沖縄戦」舞台あいさつ
 3日午後6時 「恋恋豆花」舞台あいさつ+洸美—hiromi—さん主題歌生披露+モトーラ世理奈さんメッセージ
 3日午後7時半 「コンプライアンス」斎藤工監督登壇予定
 4日午後5時 大林恭子さんからのメッセージ+関係者トークショー
 4日午後6時半 アワードセレモニー

海辺の映画館
 「映画は未来を変えられる」—大林宣彦監督が新しい世代へ託すメッセージ。大林宣彦監督が20年振りに故郷の尾道で撮影した圧倒的な映像世界の遺作だ。尾道にある海辺の映画館を舞台とする。物語は、戦争の歴史を辿りながら、無声映画、トーキー、アクション、ミュージカルとさまざまな映画表現で展開していく——メインキャストとして、銀幕の世界へタイム

ドキュメンタリー沖縄戦は、米軍が撮影した記録フィルムを交え、上陸作戦から戦闘終了までを描いている ©ドキュメンタリー沖縄戦
リープをする3人の若い男を厚木拓郎、細山田隆人、細田善彦が演じ、それぞれの運命のヒロインを吉田玲、大林組初参加の成海璃子、山崎紘菜が演じている。また、本作の物語の核となる移動劇団「桜隊」の看板女優を、近年の大林作品を支える常盤貴子が演じる。生のエネルギーにあふれた、誰も体験したことのないエンタテインメントが、幕を開ける。

ドキュメンタリー沖縄戦 
 戦後75年、知られざる沖縄戦の決定版。日本で唯一の地上戦が行われた沖縄。それを描いた映画やドラマは少ない。また学校の授業でも駆け足で終わるため多くの日本人は沖縄戦をほとんど知らない。
 それは子供たちには伝えられない悲惨と絶望。当時、負け続けていた日本軍は本土決戦準備の時間稼ぎのため、沖縄を捨て石にした。十分な兵力と武器も送らず、米軍50万8千人に対して、日本軍は11万6400人。「1人が5人殺せば勝てる!」と精神論で戦わせた。さらに足りない兵を補充するため、沖縄県民の14歳から70歳まで、女性、子供、老人をも徴用し戦闘協力を強制。結果、全戦没者20万656人の内、沖縄県出身者12万2282人。当時の人口で言えば3人に1人が死んだことになる。
 さらには、軍の強制による集団自決が行われた。死に切れない子供を親が自ら手を下し殺す。そんな地獄絵が展開。その当時を知る体験者、専門家の証言を中心に、米軍が撮影した記録フィルムを交え紹介。上陸作戦から、戦闘終了までを描く。監督は原発事故の悲劇を描いた劇映画「朝日のあたる家」の太田隆文監督。原発事故に続き、沖縄戦をドキュメンタリーで描く。

みとりし

「みとりし」は、新人の医者と看取り士が、さまざまな事情の患者と出会い成長する姿を描いている(写真上と下 )©2019みとりし製作委員会
 交通事故で娘をなくした柴久生。生きる気力をなくし、自殺をしようとした瞬間に「生きろ」という声が聞こえた。その声は、柴が共に仕事をしてきた友人の川島の声だと、彼の「看取り士」だった女性から聞かされた。柴はそこで初めて、「看取り士」の仕事は、「医者から余命告知を受けた人が最期をできるだけ安らかに迎えられるように手伝うこと」だと知る。5年後、定年前に仕事を辞めた柴は、岡山県高梁市で次の仕事として看取り士を選んでいた。地元の清原診療所と連携しながら、ボランティアスタッフと一緒に患者たちを温かく支えている。そんなある日、新任の医師・早川奏太と新人看取り士の高村みのりが着任してきた。新人の医者と看取り士はさまざまな事情の患者と出会い、成長していく。

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