小東京では日米文化開館前のJACCCプラザに、地元の商店会やロータリークラブのメンバーなど約50人が集まった。日本総領事館の武藤顕総領事と小東京のある第14区選出のケビン・デ・リオン市議も応援に駆け付けた。
次にあいさつに立ったデ・リオン議員は、LA市のホームレス問題が危機的な状況にある中でも特に、14区は際立ってホームレスの人々が多く、その数は14区だけでシカゴ市やヒューストン市を超えるほどだ、と述べた。コミュニティー全体から近隣住民や歩行者まで、さまざまな影響が及んでいるが、その背景には逆境にある人たちの個人レベルの不運だけでなく、住宅不足や経済不均衡などの政策問題、人種などの社会問題などが複雑にからみ合っているので、単体の施策では対応が間に合わないという。「各署が一つになって取り組まねば解決は得られない」と強調するデ・リオン氏は、「きょうのイベントはその、皆が力を合わせる努力を象徴している」と述べた。
汚職スキャンダルにまみれて降板したウイザー議員に代わり昨年10月に14区の市議になったばかりのデ・リオン氏は、先日のローズ・オチ・スクエアの命名式でもそうであったように、情熱的で誠意を感じるスピーチで、聴衆を引ききつけた。その名前の頭文字「KDL」の愛称で、すでに地区民から親しまれているようだ。
デ・リオン氏は短いスピーチの最後に、「外交レベルの重鎮である武藤総領事が、草の根レベルのイベントに参加したこと」を今一度喚起した。デ・リオン氏が武藤氏をたたえると、ボランティアから武藤氏に大きな拍手が湧いた。
「さあ、清掃を始めよう!」という小東京ロータリークラブのジョージ・タナカ会長の掛け声で、ボランティアは数人のグループを作って通りに繰り出し、清掃を行った。
小東京ロータリークラブのタナカ会長は、パンデミックで休止していた毎月1回のフランシス・ハシモト・プラザの清掃を、「きょうを機会に再開する」と宣言した。とはいえ、ロータリークラブが長年継続してきた清掃ボランティアはこれまでも、常に人集めが大変だったという。タナカ会長は「市が声掛けするこのようなイベントを契機に多くの人々がボランティアの機会に気付いてくれたらいいと思う」と述べた。また、小東京ビジネスアソシエーションの竹花晴夫さんも「日本人は、日系米国人に比べてボランティアに出てきてくれる人の数が少ない気がするね」とコメントし、ボランティアの動向については残念な面持ちを見せていた。竹花さんは数人のメンバーと、サンペドロと1街の交差点周辺を清掃した。この角にはローズ・オチ・スクエアがあり、その向こうに、ホームレスのテントが立ち並ぶトリウミ・プラザが見える。
小東京は全米で三つしかない日本町(他はサンフランシスコとサンノゼ)の中で最大のジャパンタウンである。まずは地元の小東京の清掃に参加して、次に各地のアジア系の町をお互いに清掃し合うような、そんなお掃除の輪ができないものか、と夢を描きながら、軍手をはめた手でゴミを広い歩くボランティア参加者の行動に頭を下げた。
【長井智子、写真=長井、マリオ・レイエス】