アジア系米国人先駆者の法要のため宗派を超えて49人の僧侶が参集した
 4日、小東京の東本願寺別院で、追悼式典「May We Gather : A National Buddhist Memorial Ceremony for Asian American Ancestors」が行われた。同別院メインホールには米国仏教団マービン・ハラダ総長をはじめ、東本願寺別院の伊東憲昭輪番、禅宗寺のダンカン・隆賢・ウィリアムズ師、そして中国、日本、クメール、韓国、台湾、チベット、スリランカ、タイ、ベトナムから、宗派を超えて計49人の僧侶たちが参集した。黒、黄などさまざまな色のけさを身にまとった僧侶たちによる合同法要の様子は、カメラで生中継された。

 表白文朗読で登壇したウィリアムズ師は、「この法要には『アジア系米国人先駆者のための全米仏教記念式典』という題目が付いているが、米国の歴史上、ヘイトクライムの標的にされ、殺されたアジア系住民も追悼している」と述べた。祭壇には物故者の碑が置かれ、その中には3月16日にジョージア州アトランタ近郊で起こった連続銃撃事件で亡くなった韓国系米国人のヨン・エ・ユエさん(63)や、1月28日に、サンフランシスコで暴行され亡くなった84歳のタイ系米国人ビシャ・ラタナパクディーさんの名があった。

法話を行う東本願寺の伊東憲昭輪番
 伊東輪番は、人が共に生きる世界を実現するためには仏法の導きが必要であると理解することが真の知恵であると述べ、「他人に暴力を振るう人を非難しないのは難しい。だがわれわれは、釈迦や仏陀から与えられた道を進む中で、仏教徒として、全ての経験や関係から学ぶ必要がある」と述べた。東本願寺別院は2月25日にヘイトクライムによる放火と破壊の被害に遭い、復旧作業はまだ終わっていない。
 ホノルルから来訪した大本山超禅寺国際禅道場のクリスティーナ・ムーン師は「精神的な強さ(pāramitā of vīrya)」について語った。羅府新報の取材に対し、同師は「これほど多くの宗派が協力したことは歴史的だ」とEメールで回答した。さらに「この合同法要はアジア人やアジア系米国人に対するわが国の長い反感の歴史を再認識するものでもあった。主催者がこの問題を幅広い層に向けて提起してくれたことに深く感謝している」とつづった。
 法要の最後、タイの伝統的な儀式として、僧侶らは仏陀に結びつけられた糸を持ち、別院を後にした。
 この法要を企画したウィリアムズ師は「僧侶全員があの糸を持って出ているが、この糸はわれわれを仏陀に結びつけただけでなく、お互いを結びつけている。われわれは一人ずつこの会場に入ってきたが、最後は『共同体』」となって退出した。それがこの糸の真意だ」と説明。また、「この合同法要が、反アジア人種差別に苦しむ全ての人々にとって、癒やしの瞬間となることを願っている」と述べた。
 米国では、昨年以降アジア系住民へのヘイトクライムが急増しており、背景には中国起源説が流布された新型コロナウイルス感染拡大があると言われている。
 合同法要の様子はウェブサイト(www.maywegather.org/livestream) で視聴可能。
【グエン・ムラナカ、訳=砂岡泉、写真=マイケル・カルロス】
僧侶らは仏陀に結びつけられた糸を持ち、別院を後にした

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *