JANMは15日にスコット氏より、1千万ドルの寄付を受けとったことを発表した。これは同館が受け取った寄付としては史上最高額。
「当館、アジア系コミュニティー、そして米国にとって大きな試練であった一年を経て、私たちはスコット氏の寛大さと全米各地のコミュニティーで社会的変化をもたらすことに注力している組織を支援する先見性に心から感謝する」。館長兼CEOのアン・バロウズ氏はこのように述べ、画期的な寄付に感謝した。「当館は30年近くにわたって、全ての米国人と米国に向けてより良い未来への道を指し示すべく、日系人の強制収容や公民権の喪失の経験を教訓として伝えてきた。スコット氏の寄付によって、私たちはその歴史を生かし続け、いまだ完璧ではない現在に光を当て、より公正な未来を作る活動を続けていくことができる」
JANMはこれまでどんな状況にあっても確固たる寄付を日系米国人やアジア系米国人コミュニティーから得てきた。しかし全体像と比較してみれば、アジア系組織への資金提供は少なく、見過ごされがちであるとの認識が高まっている。バロウズ館長は、「このようなスコット氏による当館や他のアジア系組織への寄付が、さらなる継続的な支援や、新しい支援を得るきっかけになることを願っている」と続けた。
スコット氏は電子出版プラットフォーム「Medium」への投稿で、芸術文化団体、高等教育機関、社会正義のための非営利団体など、多様性に富んださまざまな286の助成先を発表し、「世界が必要とする声に力を与える286のチーム」という見出しにしたかったと記しているという。バロウズ館長は「この286団体からなるチームの一員であることに心から感謝し、レイシズム、不公正、そして公民権の侵害といった米国の課題と、当館の展示やプログラムに息づく文化的な多様性の祝典とを交差させる活動を続けていく」と話し、小東京の隣人であるイースト・ウエスト・プレイヤーズを含む、助成を受けた全ての団体にも祝意を贈った。
一方、アジア系米国人の演劇作品において最大の団体で今回スコット氏から数百万ドルの寄付を受け取ったことを発表したEWPは、ディレクターのスニハル・デサイ氏が次の声明を発表した。
「『イースト・ウエスト・プレイヤーズ』は、スコット氏の並外れた慈善活動の受領者であることを非常に光栄に思う。スコット氏は『不平等に苦しんでいる人々は、彼らが作成している変化についての物語で舞台の中心となるに値する』と表明したが、その感情は正にわれわれが行っていることを要約している。アジア系へのヘイトクライムが増加し続ける時代において、この寄付は、社会に組み込まれた不公平に対してわれわれが発言し続けることを、確実にするだろう」
EWPにとって数百万ドルの寄付はインフラ整備、パンデミックの影響を受けた演劇アーティストの広大なネットワークへの資金提供とサポートの増加などに多大な利益をもたらす。
JANM、EWPの他、「セルフ・ヘルプ・グラフィックス」「パサデナ・シティー・カレッジ」なども受領。
マッケンジー・スコット氏は、フォーブスの推計によると保有資産およそ570億ドルで、世界で22番目に裕福な人物とされる。
スコット氏は、慈善活動において過小評価されている組織に寄付することで他とは一線を画している。今回の寄付では、歴史的に資金が不足し、見過ごされてきた分野やコミュニティーで、影響力の大きい組織を支援することを目指している。各団体への具体的な寄付額など詳細は公表していないが、慈善団体「子ども防衛基金」は一度の寄付としては過去最高額となる2千万ドルを受け取ったことを明かしている他、黒人と先住民有色人種の人々が取り組む慈善活動に富を再分配する「ディコロナイジング・ウェルス・プロジェクト」やロサンゼルスに拠点を置き元ギャングメンバーの社会復帰を支援する「ホームボーイ・インダストリーズ」なども寄付を受け取ったという。【訳=長井智子】