7カ月ぶりの日本で、今は実家に母と2人で居る。98歳の母のもっぱらの楽しみは、新聞とテレビだ。その母の大好きなテレビ番組の一つが、残念ながら秋には姿を消すという。
 その番組「アタック25」は、始まって46年という長寿のクイズ番組で、視聴率も決して悪くない。が、悪くないのは「世帯視聴率」で、「コア視聴率」が低い。それが打ち切りの原因だという。
 コア視聴率とはどうやら、13歳から49歳まで(つまり中学生以上、50歳未満)の人口を対象にした視聴率を指しているらしい。テレビ番組のスポンサーとしては、いくら多勢の人が見ても、売りたい商品に関心を示さない人々では意味がない。世帯視聴率というのは、母のような暇を持て余す高齢者世帯も含んだ数字を表す。確かに、このような世代が新しく物を購入する可能性はごくごく低いだろう。
 テレビの出始めの頃は、近所の人まで集まって皆で番組を見たものだが、やがて一家に1台になり、今では1軒に複数台も珍しくない。番組を見るにも、録画しておいて後日見たり、コンピューターやスマホで見たりと、場所も時間も、手段でさえも、多様化している。その状況を背景にコア視聴率という概念が出てくるのだろう。
 ドラマ番組の放送時間帯もまた、変化しつつある。かつてドラマといえば8時台、9時台だったのが、今では10時、11時、時には深夜にも。面白いと評判のドラマに興味を持っても、私には見るのもなかなか難しい。番組制作側にとり、私はターゲットとする世代ではないということだろう。これも残念ながら。
 さて今月は、いよいよ東京オリンピックが始まる。コロナ収束にはまだ程遠く、中止論、延期論も聞こえた中での開催で、入場観客数が大きく制限され、人の集まるパブリックビューイングも次々と中止が発表されている。
 今、推奨されているのは「テレビでの観戦と応援」。こればかりは、老いも若きも同じように、画面越しの熱戦に興奮し拍手を送ることが期待されているに違いない。【楠瀬明子】磁針

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