数々のドラマを作った日米のプロ野球のレギューラーシーズンが終わった。各ステージのプレーオフを経て、日本シリーズ、ワールドシリーズへ、とハイレベルの熱戦が繰り広げられるファンにとって胸躍るポストシーズンが始まる。
 ただ、日本人に限ってはブレーブスの斎藤、川上の両投手のみの出場となり、ちょっぴり寂しさを覚える。昨年はワールドシリーズで松井秀がMVPに輝き、日本を沸かせたのが懐かしい。
 エンゼルスは松井秀、ドジャースでは黒田がプレーした。ともに、円熟の域に達しチームの要として活躍。同じ日本人として誇りに思った。だが、当の2人の契約は今季限り。ともにFAとなり、可能性がある移籍は地元日本人ファンには非常に恐い。
 チームを去る、または帰国するかも知れない選手がいる中で、海を渡って夢を叶えようとする勇者がいる。楽天の岩隈久志投手だ。昨年のワールド・ベースボール・クラッシック(WBC)の決勝で快投を見せるなど活躍した。ここでの経験が刺激となり、メジャー志向を募らせたようだ。
 「ぜひ、ドジャースへ」とロサンゼルス地区、「いや、エンゼルスに」というオレンジ郡在住の日本人は願うだろう。しかし、ポスティングシステム(入札制度)を使うだけに、本人はどうすることもできない。
 気になるのが落札額。過去の松坂や井川の破格の額にはおよばないものの数千万ドルになると予想される。それはすべて楽天球団に支払われる。岩隈がFA取得を待たずに海外移籍を決めた理由の一つが、それだという。世話になった球団への「恩返し」だそうで、何とも性格のいい岩隈らしい思いやりだ。
 これまでの入札は単なるビジネスの取り引きとしてしか見なかったが、今回は優しい岩隈の「置き土産」の中味が気になる。できるだけ高い値で落ちて、それが楽天、ひいてはプロ野球発展のために役立ってほしい。【永田 潤】

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です