昨年8月の総選挙で政権交代が実現し、2大政党制への移行と清新な政治への期待が高まった。しかし日米合意の普天間基地移転を覆した民主党・鳩山内閣は、パンドラの箱を開けたような混乱に陥り、自ら設けた解決期限を次々に破り、なんら解決策を見出すことも無く、日米関係に重大な亀裂を生じさせてしまった。後を受けた菅内閣も小沢前幹事長の政治資金問題に踏み込めず、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で失態を演じ、北朝鮮の延坪島の砲撃、ロシア大統領の北方領土視察、ウィキリークスの米国外交機密文書の暴露、と大きく枠組みを変えつつある国際社会のせめぎあいの中で、確固たる外交戦略とトップの明確なリーダーシップを示せず日本が漂っている。
 スーパーパワーを持った超大国の米国に陰りが見え、中国・韓国・台湾・インドなどのアジア諸国が台頭し、国際社会は戦国時代に突入した。この混戦を抜け出すために各国は、なりふり構わず自国の経済力と政治影響力を上げ領土拡張や世界の資源確保を最優先課題とする。国のトップ自らセールスマンとなり、自国の商品や技術の売り込みに奔走する。そこには節度も品格も二の次だ。まずは市場占有率の確保と支持国を広げようと国益最優先の戦略だ。
 残念ながら日本はこのような弱肉強食の国際社会の変化についてゆけない。政党は党利党略に終始し、リーダーたる首相は明日の日本のビジョンが示せない。明るい経済指標が出てもそれを景気浮揚につなげる政治力が働かない。国民は将来に不安を抱き景気低迷から脱出できない。若者は職の不安におびえ内向き志向。このような日本に国際社会は失望し、今までの信頼と期待は崩壊しつつある。
 明治維新、敗戦からの立ち直りと日本は国難に際して復活を果たした。復活には根本的な社会・政治システムの変革が必要だ。いま日本に必要なのは優秀な人材ではない。志と信念を持った人材である。「い出よ! 平成の吉田松陰、坂本龍馬」。混乱と迷走の2010年が終わり、2011年は新生日本が誕生する兆しが現れる年であってほしいと心から願う。【若尾龍彦】

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