南加日米協会が主催した「働く女性のリーダーシップ向上イニシアティブ」の第1回目の会合
南加日米協会が主催した「働く女性のリーダーシップ向上イニシアティブ」の第1回目の会合

 最近『女性の活躍』にまつわる話題が日米ともちまたにあふれている。オバマ、安倍両政権とも今、支持率を上げるのに必死だが、これは経済をさらに発展させ、国際競争力をつけるためにはもっと女性の力が必要だという切迫した共通認識からくるものだといえる。しかし、女性の地位が男性に比べて低いという長い歴史的背景を乗り越えなくてはならない。そのための課題は多い。そうした気運の中、女性の地位向上を図る新たなムーブメントが日米両国で起きようとしているのも確かなようだ。そのひとつとして、南加日米協会は「Women’s Leadership Counts Initiative(WLCI、働く女性のリーダーシップ向上イニシアティブ)」という女性の活躍を応援する組織を設立し、その第1回目の集まりがこのほどロサンゼルスで開催された。コミュニティーの個人・中小企業に働く人々にも関わるこのイベントの概要と、その社会的背景や今後の課題などについて上中下の3回に分けてレポートする。【中西奈緒、写真も】
 
 
注目される日米両国の動き

 まず日米の政策レベルの動きをざっと見てみよう。日本では、女性の活躍による経済の活性化を目指す「ウーマノミクス」という支援策が生まれた。これは「2020年までに指導的な地位に占める女性の割合を30%以上にする」という安倍政権の成長戦略に基づいた提言によるものだ。何も施策を講じなければ100年後の人口が現在の3分の1になるという極端な人口減少状況のもと、国をどう支え、いかに国際競争力を維持していくかが大きな課題で、この対応は他の先進諸国からも注目を集めている。それは、近代社会が抱える先進的な問題に日本がいち早く直面しているからだ。
 今月14日には、中央省庁や地方自治体、民間企業に女性登用の行動計画策定を求める法案を今年度中に国会に提出する方針が明らかにされた。また、日本経済団体連合会は主要企業の女性登用に関する自主計画を取りまとめ、27社の数値目標を発表した。
 たとえばトヨタ自動車は現在約100人の女性管理職を20年までに3倍、30年には5倍に高める目標を設定した。東レは20年までに、現在の86人を2倍に、三井物産は同67人を3倍以上にすることを目指すという。
 また、政府は女性の社会進出を後押しするために、年末にかけて税制と年金などの仕組みを改める議論にも着手するという。

 
いまだに低い女性の社会的地位
 
 米国では先月、「働く家族に関するホワイトハウス・サミット」において仕事と家庭を両立させる方法が話し合われた。オバマ大統領は「仕事は尊厳をわれわれに与え、家庭は人生の基盤であり両方ともに大切だ。多くの人が二者択一を強いられているなら、何かが間違っている」と述べ、連邦議会にも関連する立法を促した。また「女性が成功するとき、米国も成功する」と語り、女性のさらなる社会参画を支える考えを示したところだ。
 また、カリフォルニア州政府は、16年までに公的職種での女性管理職の割合を増やすことを昨年9月に決定した。カリフォルニア大学デービス校が12年に行った女性のビジネスリーダーに関する調査によると、加州の大企業400社中で重役を務める女性はたった10・5%にとどまっているという。
 つまり日米問わず、いまだ女性の社会的地位、管理職など重要ポストに就く女性の割合が極めて低いことが認められる。また、収入に大きなギャップがあることも事実で、これを是正していくことが国の経済的発展を救うと指摘されているわけだ。とりわけ、日本がおかれている状況は厳しい。
 日・米・ヨーロッパ諸国を中心に34カ国の先進国が加盟する国際機関OECD(経済協力開発機構)が12年に出した男女格差に関する報告書によると、日本での給与格差は40歳以上では40%もあり、若い世代でも15%ほど見られる。
 また上場企業の役員のうち、女性はわずか5%で加盟国の中で日本は最低レベルに甘んじている。報告書では労働市場における男女平等が実現すれば、今後20年で日本のGDP(国内総生産)は20%近く増加すると予測されているほどだ。  (つづく)

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