ホームレスにならざるを得なかった人。自らホームレスの生活を選んだ人。それぞれの行き方が米国内で共存している。
 ある時、オフィス付近の交差点でひとりのホームレスの男性と出会った。同僚によると彼は路上で生活するホームレスで、いつも礼儀正しく、すれ違うとあいさつしてくるという。1度失職し、その後の再就職の道は険しく、諦めてしまったとのこと。「感じの良い人だから、仕事を探そうと思えば見つかると思うのに」。同僚の言葉に私も納得した。
 ロサンゼルス・ホームレス・サービス局によると、2016年のLA市のホームレス人口は2万8464人と4年連続で増加。昨年9月にはLA市のエリック・ガーセッティー市長が非常事態を宣言。ホームレス問題は年々深刻化している。
 一方シリコンバレーには一風変わったホームレスがいる。グーグル社員のブランドンさんはトラックで生活するホームレスだ。彼の年収はおよそ16万ドルだが、ベイエリアの家賃は急騰し、社宅も1日およそ100ドルと高額。夜遅くまで勤務する彼にとって自宅は寝るためだけに帰るようなもの。高額な家賃を払い続けるより、トラック生活の方が貯蓄もでき経済的と話す。
 毎日会社の駐車場にトラックを停め、シャワーや食事、携帯電話の充電はオフィスで済ませ、節約生活を送る。
 デトロイト・タイガース所属のメジャーリーガー、ダニエル・ノリス投手も車上生活をするホームレス。彼の年俸はおよそ51万ドル。スポーツメーカーのナイキとも契約しており、メジャーリーガーらしい生活もできるはず。しかし、彼は月800ドルの生活費で、年季の入ったバンでひとり暮らしている。「僕に贅沢な暮らしは必要ない。この暮らしが僕にとっての『幸せ』なんだ」。彼なりの生き方の哲学があるようだ。
 ホームレス生活を送る人の事情はさまざま。生活の質を求め自ら選択する人もいるのだ。ホームレスという生き方を選んだ人に、他者の目を気にしないアメリカらしい自由な発想が反映されているように思えた。【吉田純子】

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